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zoom RSS 第114球

<<   作成日時 : 2006/05/15 19:27   >>

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 黄色い声援が乱れ飛んだ。OL、女子大生、女子高生、もしかしたら主婦も中学生もいたかもしれない。平日なのに、学校は、職場は、家庭は、どうしているのだろう。そう思いたくなるほどの追っかけ≠フ数だった。

 マウンドの「彼」の一挙手一投足に歓声があがった。ただの歓声ではない。アイドルか、何かのコンサート会場みたいな感じ。女性たちが総立ちだ。大フィーバーである。とても地方予選決勝の光景には見えない。ちなみに1回戦から、こんな調子だ。その人気は文句なく全国区だった。

 そんな熱気のスタンドにアンドロメダ調査員の神威小次郎はいた。切れ味鋭い「彼」のシュートを見ながら、満足そうにうなずいた。飛躍的に伸びた打撃を我がことのように喜んだ。足もまた一段と速くなったように見えた。



 
 数ヶ月前。出会いは坂だった。厳密にいえば、ある山の頂に向かう、最後の直線の上り坂だった。アンドロメダメンバー発掘のため、九州地区を巡回していた神威は、その山に立ち寄った。休息だった。ちょっと頭を休める時に、高いところに登って、きれいな空気を味わうという習慣から、ちょいと顔を出したなじみの山だった。(もっとも、山というほど標高はないが…)。

 将来のプロ野球選手に、未来ある有望選手に、その素質を伸ばす環境などを無料で与え続けるアンドロメダ方針。神威は大田原健太郎のそんな考えに賛同して、その調査員になった。野球にかける情熱は健太郎にも負けていない。そして、選手を見る目に関しても、健太郎に負けていなかった。というのも…(神威の過去については、また後日…)。


 
 「彼」は黒ずくめの衣装≠ナ走っていた。何度も何度も、全力で坂を駆け上がっていた。顔は見えない。フードをかぶって、不似合いなサングラスまでしている。明らかに顔を見せないようにしていた。

 神威はそれを遠くでながめていた。きれいな空気を思い切り吸い込み、大きく伸びをしながら、意味もなくながめていた。


「こがんところで、何の選手やろ?」

 
 その地は神威の故郷でもあった。その山は小学校の頃、遠足で出かけた場所でもあった。子供の頃はとてつもなく高い山に感じたのが懐かしい。でも、今、登っても空気は、きれいな気がした。平地だって、都会に比べれば、きれいな空気だ。それでも、特別にそう思えるから不思議だった。

 
 「彼」の走りは終わらなかった。いつまでも終わらなかった。延々とダッシュを繰り返していた。傾斜はきつい。だんだん「彼」の動きは鈍くなっていった。それでも、やめようとしなかった。意地でもやめようとしていないようにも見えた…。



「いつ、終わるとやろか…」

 

 気がつけば神威は「彼」の走りに見入っていた。なぜかはわからない。でも気になった。その必死さが気になった。やみくもに走ればいいってものではない。でも気になった。だんだん「彼」に近づいてもいた。

 「彼」はヘトヘトだった。何回繰り返したかはわからない。しかし、神威がこの場に来てからも2時間くらいが経過していたのだから、かなりのものだろう。はっきり言って、無茶苦茶だった。最後は歩くようにダッシュ? していた。今にも倒れそうだった…。



「大丈夫とね?」

 

 神威はつい声をかけていた。


「えっ」

 
 「彼」は驚いたようだった。相当、集中していたのだろう。その時、初めて神威の存在に気がついたのだった。そして、次の瞬間に「彼」はバランスを崩した。サングラスがほんの少しだけ、本当にほんの少しだけずれた…。


「あれ? 」

 
 今度は神威が驚いたような声をあげた。「彼」はすかさずサングラスをかけ直したが、もう遅い。見覚えがあるどころではない。「彼」は神威もよく知っている有名人だった…。 


 *第115球へ http://skylove-s.at.webry.info/200605/article_8.html

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