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zoom RSS 第220球

<<   作成日時 : 2007/10/07 00:37   >>

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 マスコミが遠巻きで見ていた。こそこそ、ひそひそ話も聞こえてきた。でも、もう気にしなくてよかった。普通に戻った。「やっと、いつものように話せますね」と笑った。こう返ってきた。「オレは最初っから、あまり気にしていなかったけど、まぁ、アイツらのことを考えればな」と…。


 プロ野球神奈川マジックスタジアム。打撃練習を終えた高杉明太郎が三塁側でアップを始めようとしていた東京グレートナインの方に歩み寄った。相手はグレートのベテラン・剣源之助。2人は以前から食事もよくする間柄だ。よくプロ野球界の未来について語り合う。グレート総務課長の村澤三四郎を高杉に紹介したのも、剣だった。


 その仲のいい2人が、意識的に接触を避けていた理由は夏の高校野球だった。高杉の弟・賢明が真極学園(東東京)の2年生5番打者、剣の長男・源氏が瑞泉(西東京)の1年生エース。周囲は両高対決のようにあおった。ある雑誌は、高杉と剣が弟と息子の件で大喧嘩、とまで書きたてた。


 特に年下の高杉の方はやりにくかった。「ちょっと、剣さんに挨拶しただけで、すぐ、勘ぐられるんですからねぇ、ホント…」。ずっと愚痴っていた。そして気になった。「もしかして、賢明もオレと剣さんのことで、いろいろ聞かれてはいないだろうなぁ」と…。


 気がつけば、自然と高杉は剣を避けるようになっていた。「接触しないのが、一番いいんだろう」と思って…。もっとも、これがまた「高杉と剣は口もきかなくなった」なんて報道されていたのだが…。


 剣は無頓着だった。そういう形で高杉との間が騒がれていたのは、同僚から教えてもらうまで気がつかなかった。「なんだそうだったのか。そういや、最近、明太郎のヤツ、オレのところに近づかなかったなぁ」なんて調子で…。


 「そんなこと、気にすることもないだろうに…」。正直、そう思った。でも、だからといって、こっちから近づくのも変か、とも思った。源氏のことも考えた。親のことで、アイツが集中力を欠くようなことになってはいけないか…、思うことにした。「じゃあ、明太郎に付き合うか」てな調子で…。



 そんな2人が久しぶりに接触した。高杉から近づき、こう剣に話しかけた。


 「お久しぶりです、剣さん!」

 「何だよ、その言い方、俺はいつも顔を見ているような気がしたけどな…」


 2人とも笑っていた。周囲がざわざわしているのが面白かった。


 「もうちょっと険しい顔になりましょうか」

 「そうだな、その方が面白いかな」


 高杉の弟・賢明所属の真極学園は3回戦で敗退した。真極対瑞泉は今夏、実現しない。だからもう剣を意識しなくてもいい、というのが高杉の考えだったが、2人の仲、そのものを疑惑
視しているマスコミの目はそうは見てくれない。でも、2人とも、もう普通だった。


 「明太郎、そういや、この間、ヒーローインタビューで弟の話をしたんだってな。弟の記事より、お前の記事がデカかったらしいじゃないか」

 「そういうつもりじゃなかったんですけどね…。しかし、息子さん、頑張ってますね。まだ1年生でしょ。将来、楽しみですね」

 「いやぁ、どうかな、これからいっぱい壁にブチ当たるだろうし…。お前のとこの賢明クンはいい打撃センスを持っているよ、間違いなく、お前より上だな、あれは…」

 「いやいや、まだまだですよ。こてんぱんに負けましたし…。源氏クンはいよいよ決勝でしょ。今日も、もう終わったんですよね、途中まで7−1とか聞いていましたけど…」

 「ああ、さっき終わった。おかげさまで11−1で勝たしてもらったよ。まぐれが続くから、こっちがビックリしているよ。アイツがピッチャーでここまで勝てるとは、思ってもいなかったし…。でも瑞泉は将吾クンがいるからなぁ。彼の存在が大きいよ」

 「源氏クンと同じ1年生の早瀬クンですね。確かにあの子もいいなぁ…。源氏クンと2人でGSコンビでしたっけ…」…



 2人の会話は三塁ベンチ前で、延々と続いた。剣はアップ前のストレッチをしながら、高杉と話していた…。




 その頃、甲子園では準決勝第2試合を戦った両チームが委員通路でマスコミの取材を受けていた。


 「決勝戦まで勝ち進んだら、父が見に来るって言っていたので、楽しみ。精一杯頑張ります」

 瑞泉の1年生トップバッターの早瀬がテレビカメラの前で声を弾ませていた。

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