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help リーダーに追加 RSS 第249球

<<   作成日時 : 2008/04/19 03:55   >>

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 肩が一段と重く感じた。「落ち着け! 落ち着け!」。いろんな人が、きっとそう言っているんだろうなぁって、なぜか人ごとのように思えたという。こんな大舞台で、どうしたんだ、どうなったんだ、オレは…。わかっているけど、体がこの時は動かなかった。


 腕を振りぬいた。必死に振った。逃げてはいけない、と自分に言い聞かせて、振った。重い肩はそれに必死で応えようとしていた。指先も援護しようとしていた。体全体に応援されているような感じでもあった。



 だが…。



 ストライクが取れなかった。コントロールがまた乱れた。「ボール」コールを受けるたびに情けなかった。なぜだ。どうしたんだ。一瞬、そう思って、それを忘れようと思い、次の投球動作に入った。普通の精神状態である、と見せかけようしていたのかもしれない。


 3球目に外角にストライクが入った時には、ちょっとホッとした。ストライクが取れたことよりも、バッターが手を出さなかったことにホッとした。甘いボールと、力ないボールだった、と自覚していた。



 また怖くなったのだろうか。いや、そんなことはない。普通なんだ、普通。そう言い聞かせていたのに、またボールが続いた。結局、四球を与えた。




 瑞泉(西東京)対守野台(兵庫)の決勝戦。瑞泉のエース・1年生GSコンビの「G」剣源氏が4回につかまって、5−0から一気に追いつかれた。なおも二死一、三塁。ここで、剣は2番打者・元崎を四球で歩かせたのだった。



 「守野台は一気に逆転のチャンス! 一方、踏ん張れるか、剣! 打席には3番の忍川が入ります!」。KOSMOS放送の塁沢高次アナはいつもより、落ち着いた声で話していた。スタンドの盛り上がりを、もう少しうまく表現してもいいか、と思ったが…。




 瑞泉・風喜監督は2点を奪われたところで、剣を交代させようか、迷った末に、その底力を信じて、続投させた。ところが、直後の打者に走者一掃の同点二塁打を許すや、ついさっきの気持ちはどこへやら、再び交代を考え、最終的には、また続投させた。ベンチも苦しんでいた。ゲキを飛ばしながら、祈っていた。



 GSコンビの「S」早瀬将吾はセンターのポジションからマウンドの剣に向かって、何度もサインを送っていた。この回の最初は気づいてくれなかったが、今はちゃんと、サインで返事が返ってきている。でも、早瀬はわかっていた。剣が一生懸命、普通に見せようとしていることを…。そして、右肩をゆっくり、ゆっくり回そうして、途中でやめた。軽く、軽く屈伸しようとして、これもやめた。こちらもまた、祈っていた。



 3番・忍川への投球もボールが先行した。もう押し出しはこりごりだ。剣は当然、そう思っていた。



 そしてカウント0−2からの3球目だった。快音が響き、その打球は右中間へ飛んだ。そして、また早瀬が走った。走った。



 「ん!」。ネット裏最上段のアンドロメダサブリーダーの鬼車寅吉はまた思ったという。早瀬の走るスピードにわずかな変化を…。



 早瀬は楽勝で打球に追いつくことはできなかった。もっとも、普通なら右中間真っ二つの打球で楽勝キャッチなんてあり得ないだけに、少しも不自然ではなかった。



 飛んだ、ダイビングを試みた。抜ければ、またまた満塁の走者一掃は間違いない。そんななかで飛んだ。




 「すごかばい、アイツはやっぱり…」。アンドロメダ九州地区調査員の神威小次郎がまたまたうなり声を上げた。



 かなり激しく飛んだ、一か八かのダイビングキャッチは成功した。地面にかなりの勢いで体をうちつけたものの、忍川の打球は早瀬のグラブにおさまっていた。




 マウンドの剣が心底、ホッとした顔をしていた。風喜監督も同じだった。守野台サイドからはため息が漏れた。ホームベースに到達していた三塁ランナーの飛浦海斗は「惜しいなぁ」ってしみじみつぶやいた。そして手をグー、パー、グー、パーとやりながら、ベンチに戻った。



 ファインプレーの早瀬は立ち上がり、小走りにベンチに向かった。5回表の瑞泉の攻撃は早瀬から始まる。つとめて普通に動き、普通に準備した。


 グー、パー。グー、パー。マウンドにはもちろん、飛浦が上がった。もうとっくに限界を越えている。それでも紀中監督は送り出した。同点打を放った飛浦の気迫を見れば、まだ交代とは言えなかった。


 飛浦対早瀬。この試合、3度目の対決が始まった。

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