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zoom RSS 第258球

<<   作成日時 : 2008/06/21 02:27   >>

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 マンモス決勝戦。KOSMOS放送の塁沢高次アナは入れ込んでいく自分をわかっていた。「オーバートークは控えよう」と考えていたものの、だんだんと本来の…。すでに何度も絶叫はしていた。だが、まだまだ序の口のつもりだったようだ。試合は中盤。全国のお茶の間に、本格的な塁沢節もいよいよ炸裂しようとしていた。




 強烈なピッチャー返しのライナーを守野台(兵庫)飛浦海斗はよけなかった。顔付近を襲う打球。その瞬間、スタンドの海斗マニアたちの方が、おそらく目を閉じたことだろう。



 開き直って投げた球はど真ん中の棒球だった。だが、飛浦の闘志は投げ終わってもまだ燃えたぎっていた。



 とっさに出した。いや、冷静に出したのかもしれない。顔面付近の球をきっちり、グラブでキャッチしていた。あまりの勢いに取った瞬間、マウンド上に倒れこんでしまったため、周囲は一瞬、心配したものの、飛浦はすかさず、グラブのボールをアピールした。



 守野台・紀中監督もそんな飛浦の顔を確認して、胸をなでおろした。ベンチに戻ってきた飛浦に「よく頑張った!」と声をかけた。捕手の石陪歩は飛浦の頭をなでた。「ナイスファイト!」と言いながら…。



 そんななか飛浦はマウンドをチラっと見た。5回裏の守りの備えて、瑞泉(西東京)のGSコンビ「G」剣源氏がならしていたマンモスのマウンドを…。それから、ベンチ裏に向かった。「指を何とかしなければ…」と思いながら…。




 今度は守野台の攻撃が始まる。だが、その時、紀中監督はこうも考えていた。「次の回の瑞泉は8番打者からか…」




 瑞泉のセンターには5回表に勝ち越しホームランを放ったGSコンビの「S」早瀬将吾が普通に守りについた。肩も足も普通ではない。この試合、もう「レーザービーム送球」も「超快速守備」も、見せることはできない。でも、そんなふうには見せなかった。そして、いつものように、マウンドの剣にサインを送っていた。



 剣はそんな早瀬の姿を見ながら、こちらも「何とかしなければ…」と思っていた。だが、まだいろんなことをひきずっていたようだ。打たれたこと、抑えられたことなどを…。



 守野台のバッターは4番・七井。剣はあっさり、打たれた。初球、三遊間を破られた。ここで5番・桜葉はきっちり送りバントを決めた。一死二塁。またもや得点圏に走者を背負った。



 剣は気持ちで負けないように、と思ってはいた。でも、ボールは走っていなかったのだろう。6番・嶋居はセンター前ヒット。しかし二塁ランナーは三塁で止まった。早瀬の肩を警戒してのことだ。




 「まだバレていない」。早瀬は思った。同じように、瑞泉・風喜監督も思った。マウンドの剣も思った。「助かった」とホッとしている様子を守野台に悟らせないようにしながら…。




 7番・矢木沼はサードファウルフライを打ち上げた。チャンスにちょっと力んだ。サード・坂芽ががっちりキャッチして二死一、三塁だ。



 「ツーアウト! ツーアウト!」 



 坂芽は剣を元気づけた。だが、剣の状態は好転していなかった。8番・石陪には何とストレートの四球だ。とにかくコントロールが悪い。4球とも、きわどいコースだったが、まぁ、ボールと判定されてもしかたない。石陪もよく選んだ。


 剣は、次の打者が気になってもいた。どうにも、気になるあの男。前の回で走者一掃の二塁打を許した9番打者・飛浦のことが…。



 その飛浦はネクストにいなかった。控えの選手が待機していた。



 「飛浦に代打でしょうか! いや、出てきました、出てきましたぁ! 軽くスイングしながら、飛浦が打席に向かいますぅ! 」。ついに絶叫し始めた塁沢アナの声は、さらに裏返った。


 「バ、バットにぃ…!」。こんな中途半端な実況はアナウンサーとして失格だろう。でも、この時は本当に驚いたようだ。その驚きはお茶の間にも届いたかもしれない。




 「本当に大丈夫なのか」。この打席に向かう前、紀中監督は飛浦にそう聞いた。


 「ハイ。行かせてください」。飛浦はニッコリ微笑みながら、そう答えた。


 紀中監督は「よし、わかった。思い切って振って来い!」と言って、打席に送り出した。




 軽く1回だけスイングしながら、飛浦は心の中でこうつぶいやいていた。「1回でいいから、こんなふうなマンガと同じようなことをやってみたかったんだよねぇ」。



 強がって、そう思うようにしていたのかもしれない。そう思うことで気が楽になったのも確かだったという。



 バットのグリップに右手をくくりつけていた。そうしないと力が入らなかったらしい。指を無理やり、って感じだった。打った後、バットをどうするか、なんて、何も考えていなかった。とにかく、打つ。それだけの思い。



 6−5。瑞泉1点リードの5回裏、守野台の攻撃。二死満塁。



 「取られたら、取り返す!」。飛浦はバットを立てて、マウンドの剣をにらみつけた。

 

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