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zoom RSS 第260球

<<   作成日時 : 2008/07/05 04:06   >>

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 センターの瑞泉(西東京)GSコンビの「S」早瀬将吾も走った。全速力ではない。流した感じで走った。足の状態からして、それしかできなかった。マウンドのGSコンビの「G」剣源氏はそれを余裕の表情で見つめていた。満足そうな表情といった方が正解か。「勝った…」。そう確信していたようだ。


 5回裏二死満塁。打った守野台(兵庫)の飛浦海斗は、もう夢中になって走っていた。バットのグリップに右手をくくりつけたまま走った。バットとともに走った。かっこ悪いと思う暇もなかった。打球の行方も追わなかった。つまったのは間違いない。正直「やられた」と思っていた。3人の走者もただ走った。もう走るしかなかった。




 KOSMOS放送の塁沢高次アナは打球を目で追いながら、叫んだ。



 「ふらふらと高く上がったぁ! 打ち上げたぁ! ショートの田江が手を上げながら走る。レフトの紀河も前進してきたが、田江が追いつきそうだぁ!」



 雨が降っていた。でも、もちろん、そんなことは関係ない。田江にとってはイージーすぎるくらいのフライだった。



 打ち取った手ごたえも十分な剣は、そんな打球を見ながら、自然に体がベンチの方に動き出していた。瑞泉・風喜監督はまさに、手を叩いて喜ぶ準備をしていた。「剣、よく投げた」。ベンチに戻ってきたら、まずそう声をかけようと思った。うれしかった。交代まで考えたのに、対飛浦に投じたボールに今まで以上に勢いがあったから。なぜ、そう変わることができたのかはわからなかったが、そんな理由なんてどうでもいい。指揮官として、感じ取った。「剣がよみがえろうとしている」と…。



 全力疾走できない早瀬も流して走りながら、心の中で胸をなでおろしていた。難しい打球が自分のところにこなくてよかった。こう思うほど、状態は悪くなっていた。まだ打って貢献はできるはず。そう思って出続けた。風喜監督もそう信じて出場を続行させた。何より、走、攻、守、三拍子揃った男・早瀬への守野台の警戒心を考えると、簡単に外すわけにもいかなかった。



 守野台のブルペンでは大エース・太薙原紘一がゆっくり、ベンチに向かって歩き出していた。キャッチャー役を務めていた椿直広はもうベンチに戻っていた。雨の中、小走りで戻っていた。そして、飛浦の打球を目で追った。




 もう一度、塁沢アナが叫んでいた。



 「打球はふらふらと上がったぁ」



 守野台の紀中監督は「あー」と小さく声を上げていた。飛浦の力負けを感じたからではない。右手をバットにくくりつけたままの飛浦の体をその瞬間は気にするあまりだった。




 「落ちろ!」


 「落ちてぇ!」




 守野台の応援団はそう思ったことだろう。海斗マニアの団長・香村瞳はそう念じるしかなかったという。雨が瞳の髪の毛をぬらした。打球を追ったからだろうか。汗と雨が混じったびしょぬれの顔をしていた。声援を送り続けた後、口は半開きって感じでもあった。



 「あー」。



 瞳も小さく声を上げていた。




 飛浦はバットとともに一塁ベースを駆け抜けた。三塁ランナーの七井がホームに帰ってきた。さらに二塁走者の嶋居も本塁に突っ込んできた。




 また塁沢アナが叫んだ。




 「ふらふらと上がった打球がぁ、あー」



 余裕たっぷりだったはずのショート・田江が急に慌てた。レフト・紀河も慌てて走りこんだ。




 これぞ神風か。急に打球が風に流された。そして…。





 塁沢アナは興奮口調だった。




 「ショートとレフトの間にポトリと落ちましたぁ! 落ちたぁ!」




 マンモスがどよめいた。ベンチに戻りかけていた剣も慌てて…。風喜監督の表情も変わった。早瀬も太薙原も、紀中監督も…。



 瞳は小躍りして大歓声をあげていた。



 落ちた打球を確保した田江が、すぐさまバックホーム。だが、間に合わない。三塁走者に続き、二塁走者の嶋居まで…。



 一塁ベース上では飛浦がバットとともに笑顔だった。剣は肩を落とすしかなかった。




 逆転。7−6。ついにこの試合、初めて守野台がリードを奪った。

 

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