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zoom RSS 第261球

<<   作成日時 : 2008/07/12 04:15   >>

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 雨足が強くなった。グラウンドにも水がたまりそうだ。審判が試合を中断してもおかしくない勢い。だが、そのコールはない。銀傘の下のアンドロメダの面々も「ちょっと続行は厳しいんじゃないの」と話していた。白熱の決勝戦。その空模様も両チームに影響を与えるのか。



 降りしきる雨の中、マウンドの瑞泉(西東京)のGSコンビ「G」剣源氏は投球準備に入っていた。一度はチェンジと思ってベンチに下がりかけただけに、再び気持ちを整えながら…。

 5回裏二死満塁から、守野台(兵庫)の9番打者・飛浦海斗にショートとレフトの間にポトリと落ちるヒットを許し、2点を奪われて逆転された。5−0から4回に追いつかれ、5回にGSコンビ「S」早瀬将吾のホームランで再び、1点を勝ち越したのに、ついにひっくり返された。飛浦を完全に詰まらせ、打ち取ったと思っていただけに、剣は肩を落とした。


 しかし、今度は気持ちがなえることはなかった。逆転されても、再びわいてきた投球への自信は変わらなかった。「球は悪くなかったはず」。そう考えることができた。対飛浦で、何かをつかんだ、と思った。この大舞台で、新しい自分を見つけたような…。だから、前を向いた。前を向けると思った。



 逆転に沸く守野台ベンチ。こちらは雨なんか気にもしていない雰囲気だった。何度も何度もナインが大きな声をあげた。ガッツポーズも繰り返した。一塁ベース上の飛浦を何度もたたえた。ちょっと騒ぎすぎなくらいに…。



 そんなナインの喜びを感じながら、飛浦も笑みをこぼした。それから、バットをようやく外しにかかった。右手をくくりつけたバット。グリップをポンとたたいただけで、それは抜けた。ていうか、抜いた。ここまでの作業を飛浦は無意識に進めていた。逆転に成功した喜びもあって、痛みも何も感じなかったという。


 気がついたのは、その後だった。バットを握った形のままの右手の指を広げながら…。激しい雨に打たれながら…。



 雨のなか剣は投げた。二死一、二塁。バッターは1番・慶永。初球からズバッと投げ込んだ。


 「ストライク!」


 雨にぬれながら球審がコールした。球の勢いがよかったからだろうか。その声もひと際、大きかったような…。


 それを見ながら、瑞泉・風喜監督はうんうん、とうなずいた。逆転されても、剣は対飛浦の時と同じボールを投げた。それを確認するとともに、安心した。まだ1点差。まだまだ何とかなる、と思いながら…。



 簡単にカウント2−0と追い込んでから、剣は慶永へ3球目。外角ギリギリのところにビシッと決めた。3球三振。慶永は手が出なかった。それほどの球だった。




 ストライクコールを聞くや、剣は元気よく、ベンチに走った。笑みも戻った。雨の中、よみがえった。初めて追う立場にしてしまったが、もしかしたら、この時の顔がこの日、最高の顔だったかもしれない。



 もっとも三振の慶永を迎えた守野台ベンチもにぎやかだった。まだ逆転の興奮がおさまっていない。一塁から、ヒーローの飛浦が戻ってきた時はさらに盛り上がった。



 「かいとB! ナイスバッティング!」。まだ、こんな声も続いていた。



 飛浦も笑顔だった。その時までは…。



 守野台・紀中監督もわかっていた。



 「飛浦!」。声をかけた。



 「お願いします!」。飛浦はそう返事した。



 雨も勢いも止まらなかった。6回表の瑞泉の攻撃を前にして、試合はついに中断となった。



 「まさか、これで終わりじゃないよなぁ」。剣がそう思うほどの天候状態だった。そうなれば、さっきの飛浦の一撃が重くのしかかる。



 グラウンドにはシートがかけられた。しかし、他はずいぶん水がたまっている。


 「うそだろ」。剣は急に心配にもなってきた。



 一方の守野台ベンチもバタバタしていた。




 「今すぐ、行ってこい!」



 ベンチ裏で紀中監督の声が響いていた。



 

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