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zoom RSS 第263球

<<   作成日時 : 2008/07/26 04:16   >>

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 雨の後のマウンドは、やはり、ちょっとやわらかい感じがした。でも、そんなことはどうでもよかった。自分の鼓動が聞こえた。緊張感だけではない、と自分には言い聞かせた。もう逃げない、とも言い聞かせた。右腕を高く上げ、おろした。「いざ!」。ちょっとだけ声をあげた。今度は太陽が照りつけた。



 マンモスのネット裏最上段に陣取るアンドロメダの面々はそれぞれ、手元にあった資料をめくり始めた。同じように瑞泉(西東京)ベンチもざわついていた。



 「どんなピッチャーだ?」


 「予選では1試合も投げていません。代打では何試合か登場していますが…。予選決勝から、ここまでは試合にも出ていませんでした」



 瑞泉・風喜監督にマネジャーが、そう説明していた。



 マンモス決勝戦。7−6。守野台(兵庫)1点リードの6回、先発の1年生投手・飛浦海斗に代わって、マウンドに上がったのは2年生投手だった。



 「背番号1(太薙原紘一)じゃなかったか…」。そう思っていたのはアンドロメダサブリーダー・鬼車寅吉だけではなかったはずだ。


 「あの子、キャッチャーではなかったったいねぇ」。アンドロメダ九州地区調査員の神威小次郎は資料を読みながら、つぶやいた。





 守野台・紀中監督は、この交代を迷った末に決めた。雨天中断の間に、太薙原を呼び「次の回、最初はアイツからいかせる。お前は、いつでもいけるようにスタンバイだけはしておいてくれ。ただし、無理はするな」と告げた。



 ボロボロになってマウンドを降りた飛浦を見て、紀中監督は病み上がりの太薙原の起用に慎重になったのは事実だ。しかし、この起用は前の回から、考えてもいた。6回の瑞泉は8番・東乃から。それを考えて…。




 太薙原はあっさり承諾した。それどころか、笑みさえ浮かべて、紀中監督に、こうも言った。


 
 「アイツにチャンスを与えてくれるんですね。ありがとうございます!」



 それからベンチ裏に向かい、ものすごい明るい表情で、ものすごい明るい声で「おい! 監督が呼んでいる! いってこい!」と伝えた。そして決まった。2番手で登板することが…。





 グラウンド整備が終わり 「お前の普通の力を出せば、大丈夫だ。これまで一緒に練習してきたオレがお前の力はよくわかっている。思い切って投げて来い!」と太薙原から、そう声をかけられてから、マウンドに向かった。小走りで向かった。




 「ここでオレが…」。マウンドに上がり、投球練習はあえて「普通」に行った。そうすることが太薙原との約束でもあった。太薙原の教えでもあった。




 「椿! 気合入れていけ!」



 ベンチから太薙原の大きな声が聞こえてきた。



 その声の方向をチラっと見た。引き締まった表情で 「先輩! オレはもう逃げません!」という気持ちを訴えたつもりだった。




 プレー再開。




 守野台の2番手投手・椿直広は、大きく振りかぶった。その前の回までブルペンで太薙原の球を受けていた男が堂々と…。



 そして…。



 「何だよ、あれ?」



 瑞泉サイドからはそんな声があがった。



 スタンドからは少々、笑いももれた。



 椿の第1球は外角低めにストライク。130キロのストレートに瑞泉の8番・東乃はタイミングが合わずに、見逃すしかなかった…。 


 

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