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zoom RSS 第265球

<<   作成日時 : 2008/08/09 02:32   >>

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 じっと見つめていた。タイミングを計っていた。不思議と、やりにくいな、とは思わなかった。守野台(兵庫)の1年生先発投手・飛浦海斗のナックルボールに対応できたからだろうか。それとはまた異質な相手とはいえ、何とかなりそうな気がしていた。「体さえ持ちこたえてくれたら…」。不安はそれだけだったという。



 守野台の2番手投手・椿直広は、このときのことを、あまり覚えていない。夢中だった。集中していた。もちろん、緊張もしていた。ただ捕手の石陪歩のミットに投げ込むだけ。大エース・太薙原紘一のアドバイスで完成させたロボット投法を駆使して…。


 球のでどころには、特に工夫がされてあった。実は、この部分は1球ごとに変えていた。それでも椿のボールに乱れはなかった。どんなフォームで、どんなタイミングで投げても、最大武器の制球力は健在だった。これには自信もあった。何度も、何度も、太薙原とともに練習したから…。ロボット投法は、それこそ7色の投球フォームがからみあって、成り立っていた。


 球種はストレートとスライダー。この2種類だけ。一時期、カーブに挑戦していたが、ロボット投法の完成を優先させた。


 マンモス決勝戦6回表。椿は瑞泉(西東京)先頭の東乃をキャッチャーフライに打ち取った。ホッとするとともに、「何とかやれそう」と思った。マウンドに上がる前は「オレのピッチングを見た人たちは、何ておかしな投球フォームなんだろう、って思うんだろうな」と考えていたが、そんなことを思うことはなかった。笑っている人、ふきだした人…は確かにいっぱいいたのだが…。


 
 9番の昭和は2球目のスライダーを空振りした。タイミングがまったくあっていなかった。3球目のストレートもバットに何とか当てた感じのファウル。そして、4球目は…。





 そんな椿の姿を見て、太薙原は涙が出そうになっていた。登板準備のため、ブルペンに向かいながら…。練習パートナーとしてだけの喜びではない。「オレのせいでアイツには回り道させた」。ずっと、その思いがあったからだ。




 守野台・紀中監督は兵庫県予選決勝戦当日の朝のことを思い出していた。あの時の椿の顔を…。憔悴しきった様子で「オレのせいです」を繰り返していた姿を…。とても、その日、先発できそうになかったし、実際に、椿は登板を拒否した。「太薙原さんの代わりはオレには無理です」と…。そして、そこから、1年生・飛浦が頭角を現すことになったのだが…。





 しかし、紀中監督は感傷的になっているだけではなかった。まだ考えがあった。ちょっとだけ、迷ったが、「あの目」を見ると、やはり決断するしかなかったという。





 カクッ、カクっ、カクっ…



 椿の昭和に投じた4球目はストレート。昭和には外角のボール球に見えたようだ。だが、判定は「ストライク!」。きわどいコースで勝負できるコントロールが生きた。見逃し三振。あっさりツーアウトだ。




 「いける! いける!」。太薙原はうれしくてたまらなかった。



 椿は軽く深呼吸していた。「よし! まずは合格だな」と自分で、そう採点していた。登板前に紀中監督に言われた仕事をきっちりこなした充実感があった。




 そして、スタンドがさらに沸き始めた。注目を集めていたのは打席に入るスラッガーだ。瑞泉のGSコンビ「S」こと早瀬将吾。ここまで驚異の3打席連続ホームランをかっ飛ばしている。誰もが思った。「また出るのか」と…。4打席連続の離れ業への期待。異様な盛り上がりでもあった。




 瑞泉アルプス席は大騒ぎだった。早瀬の父・達将、母・愛子、妹・瑠未の3人はドキドキしながら、グラウンドを見守った。おしゃべりな瑠未は「来たわよ、来たわよ」なんて言いながら…。




 ネクストで早瀬は椿のロボット投法をチェックした。球のでどころの違いも、だいたいわかっていたという。足、肩…。万全ではない体を考え、今回も3打席目同様に一発を狙っていた。4打席連続ホームラン。それを思い描いた。セルフイメージを高めた。外のストレートをレフトスタンドに叩き込むイメージだったという。




 ところが…。




 ネット裏のアンドロメダの面々も、興奮した。




 さっきまでの大雨がうそのように、照りつける太陽の下、マンモスの熱気はマックス状態に高まっていた…。






 

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初めまして★!
飛んできました \(^O^)/
のべる.ぽえむ書いてるので
ぜひ遊びに来てください∩^ω^∩

ほいっぷみるく
URL
2008/08/10 21:27
ほいっぷみるくさんへ。
コメントありがとうございます。どうぞ、よろしくお願いします。こちらもちょくちょく寄らせていただきます。
妃垣俊吾
URL
2008/08/11 02:48

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