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zoom RSS 第267球

<<   作成日時 : 2008/08/25 02:54   >>

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 守野台(兵庫)の捕手・石陪歩はこぼれそうになる涙を懸命にこらえた。いつも当たり前のようにあったものが、突然、なくなってから、ここまでの大変だった日々を思い出したからではない。「オレのことなんて、アイツの苦しさに比べたら…」。苦しくなったらいつも、そう思ってきたから…。本当に、本当にうれしかった。



 瑞泉(西東京)のトップバッター・GSコンビの「S」早瀬将吾は、守野台の投手交代にも動じることはなかった。相手のエース、背番号「1」太薙原紘一のビデオはちゃんと見ていた。いつでも復活されても対応できるように研究もしていた。それこそ、1年生投手・飛浦海斗と同じくらい、対策は頭の中に入っていた。ロボット投法の椿直広のデータはなかったが、対太薙原なら、早瀬はすぐに切り替えることができた。






 1年生の時からプロが注目する神戸の豪腕・太薙原は重いストレートと切れ味鋭いスライダーが武器で、県予選準決勝まで、素晴らしい投球の連続だった。課題だったヒジ、肩のスタミナもこの夏は問題なかった。アンドロメダの欅重次郎トレーナーによって、体は万全になった。自信もついた。「今度こそマンモスへ」。いや「今年は必ずマンモスへ」。そう思って、予選のマウンドで投げ続けた。まさか、予選決勝のマウンドに上がれないとは夢にも思っていなかったが、まさか、そんなすべてを飛び越えて、いきなりマンモス決勝のマウンドに上がることも、その頃はもちろん、考えてもいなかった。






 「先輩!」





 降板し、一塁に入った椿が大きな声をあげた。太薙原はその声を受け止め、幸せそうな笑みを浮かべた。







 6回表二死走者なし。7−6。守野台1点リードのマンモス決勝戦。しかし、太薙原に緊張感はなかった。それよりも、何よりも投げられる喜びが上回った。






 キャッチャーの石陪のサインはもちろん、ストレートだった。太薙原も異論はない。






 KOSMOS放送の塁沢高次アナが「守野台のエース・太薙原がどんなピッチングを見せるのかぁ! 注目の第1球です」とほえるように実況した。







 予選の時と変わらぬフォームで思いっきり投げ込んだ。大きく振りかぶり、そして、左足を真一文字になるくらいに高く上げる独特なフォームは健在だった。







 ストレート。真ん中低めにズドンと来た。







 一発を狙っている早瀬はその球をまずは見た。石陪のミットが響いた。







 「ストライク!」。球審がコールするや、守野台応援団がどっと沸いた。








 球速は147キロ。にしき水惣(愛知)のスーパー1年生・結城亮に球速は及ばない。だが、速さ以上に…。







 「スピンがかかっているようなって表現でいいのだろうか」。ネット裏のアンドロメダリーダーの大田原健太郎はそうつぶやいていた。太薙原の投球はこれまで何度も見ている。しかし、何度見ても、ほれぼれとする球だった。






 しかも、休み肩ということもあってか、病み上がりどころか、いつも以上にボールが来ている感じだった。








 早瀬もそれを感じとった。ビデオで見てきた以上のボールだと思った。だが、そこは1回戦で轟大学園(広島)の左腕・俵星光の速球をカットしてファウルで粘りまくった男。「何とかなる」。ここでも前向きだった。







 2球目。ストレートが内角低めに来た。早瀬はバットを出した。






 ファウル。後ろへ飛んだ。






 「重い」。早瀬はそう思った。






 打席をちょっとだけ外した。「次もスライダーではないな」。そう思って、下半身に力を入れた。ボロボロの状態の体に「悪いけど、ちょっと無理するよ」と言い聞かせながら…。







 太薙原―石陪バッテリーに迷いはなかった。3打席連続ホームラン男へ3球勝負を挑んだ…。


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