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zoom RSS 第271球

<<   作成日時 : 2008/09/22 01:43   >>

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 「大丈夫か」。イニングの合間、ほんの短い時間だったが、瑞泉(西東京)ベンチでも、守野台(兵庫)ベンチでも、同じような会話がなされていた。「ええ、大丈夫です」。回答も同じようなものだった。大熱戦のマンモス決勝。スタンドの盛り上がりも、いよいよ…。両軍アルプス席も実に騒々しかった。



 ちょっと光ったような気がした。何か、見覚えがあったような…。無意識にやっていた。上を見た。下を見た。右を見た。左を見た。前を見た…。



 「よし! 何ともない」。



 守野台のエース・太薙原紘一はそうつぶやいた。



 体を心配する紀中監督に「大丈夫か」と声をかけられると、「ええ、大丈夫です」ときっぱり。それからベンチ裏に向かった。着替えのためだ。打者1人、3球に投げただけでも、アンダーシャツはもう汗でびしょびしょだった。





 瑞泉の風喜監督は三振に倒れたGSコンビの「S」早瀬将吾の体が気になった。満身創痍。普通の状態でないことはわかっている。ベンチに戻ってきた早瀬に対して、真っ先にこう言った。「大丈夫か」




 「ええ、大丈夫です」。早瀬は短く口にした。つらそうな表情は見せない。すぐにグラウンドに飛び出した。センターのポジションについた。




 7−6。6回裏、1点リードの守野台の攻撃が始まる。瑞泉のマウンドにはGSコンビの「G」剣源氏が平然と上がった。



 センターから早瀬はそんな剣に、いつものようにサインを送っていた。それに剣も応え、サインを送り返した。




 「それにしても、さっきのボールは…。いやいや、いけない、いけない。今は守りに集中しないと」。剣のサインを受け取った後、早瀬はそんなふうに自分に言い聞かせていた。




 しかし、どうしても太薙原のボールの残像が…。



 カウント2−0からの3球目。早瀬は打ちにいった。タイミングもバッチリのはずだった。だが、飛んでいったのはバットだけ。マウンドの太薙原の方向にバットを飛ばしていた。



 打ちにいった瞬間、バットを止めようとした。そこからはよく覚えていない。腕の力をゆるめたからだろうか…。



 「内側に来たような気がしたんだけどなぁ…。だめだ、だめだ、集中、集中…」。早瀬は慌てて、マウンドの剣に目をやった。




 守野台ナインは勢いづいていた。0−5から追いつき、再び1点差をつけられても、すぐに逆転した。そこへもって、エース・太薙原まで復活したのだから無理はない。しかも、それまで3打席連続でホームランをかっ飛ばしていた早瀬を3球三振に打ち取ったのだから…。今度はこっちが突き放す番だ! とばかりに意気込んだ。




 確かに試合の流れは、明らかに守野台にあった。




 だが、剣も負けていなかった。



 スタンドからの「ゲンジ」コールは相変わらずだ。守野台の飛浦海斗がグラウンドを去ったため、「海斗コール」はなくなったものの、こちらは変化はない。



 その中で剣は気持ちよさそうに投げ込んだ。あれほど、コントロールなどに苦しんでいたのに、スイスイ投げた。




 テレビ観戦の剣の父・源之助も1球ごとに満足そうにうなずいていた。




 剣は守野台の2番・元崎をセカンドゴロ、3番・忍川をショートゴロ、4番・七井をライトフライに封じた。あっさり打者3人で…。



 「もう大丈夫だ」。剣もそう思っていた。そして、「今度はオレが打つ番だ」と気合も入れ直した。




 太薙原対瑞泉打線。試合は終盤戦、7回表に入った。

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