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zoom RSS 第272球

<<   作成日時 : 2008/09/29 03:52   >>

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 何かが光った。まぶしい、と思った。だが、それから先のことはよく…。ましてや、まさか…。体が覚えていたから、よかったのだろうか。助かったのだろうか。それもよくわからない。誤算だった。計画がすべて狂った。正直、あきらめてもいた。そして、励ましはパワーを与えてくれるもの、とその時、初めて気がついたという。



 また小走りにマウンドに向かった。味方の攻撃中にアンダーシャツを着替え、また気持ちがすっきりした。7回裏の守野台(兵庫)の攻撃は、簡単に打者3人で終わったが、気にしていない。「オレはただ、ゼロに抑えるだけだ」。エース・太薙原紘一は、そう思うのみだった。





 1点を追う瑞泉(西東京)の7回表は2番・田江からだった。ここまで3打数2安打、この日、のっている1人だ。「ピッチャーが変わっても、オレはオレ。いつも通り、打つだけだ」。太薙原のデータは頭の中に叩き込んである。調子のいい時はやっかいな相手、とはわかっていたが、もちろん、弱気にはなっていない。「まずは、先頭で塁に出る」。そう誓って打席に入った。






 太薙原は落ち着いていた。体は何ともなかった。むしろ、すべてが軽く感じた。休み肩、だったのが、いい方に出たと思った。前の回、GSコンビの「S」早瀬将吾を封じた時に、思った。「予選の時よりも、状態がいいかもしれない。いいボールが投げられそうだ」と…。







 田江への1球目を投げ込んだ。外角低めギリギリいっぱいのところに「ストライク!」だ。足を真一文字にあげる独特なフォームから、ずしりと重いボールが捕手・石陪歩のミットにズバッと…。これには好調・田江も見送るしかなかった。






 「よか球ば、投げるねぇ」。ネット裏最上段のアンドロメダ・九州地区担当調査員の神威小次郎は声をあげた。それからリーダーの大田原健太郎に対して、こう質問した。「ばってん、あがんフォームだったら、ランナーば、出したら、どがんやろか。厳しかっちゃなかですか」






 健太郎が答える前にサブリーダーの鬼車寅吉が口を挟んだ。「神威はあまり、見ていなかったからしかたないかもしれないが、それはまったく、問題ない。あの投げ方をちょっと変えたクイックも素晴らしいんだ。ランナーが出ればわかるよ。とにかく、太薙原はすべてにおいて完成された投手といっていいだろう。ストレートの速さだけなら、にしき水惣(愛知)の結城亮が一番だけど、総合力では太薙原の方が上。今すぐ、プロで通用する技術、体力、そして精神力も持ち合わせている。今回の件が心配だったけど、さっきのピッチングを見れば、プロはみんなほっとかないよ。間違いなく今年のドラフトの超目玉だな。まぁ、と、いうことは、ウチには残念ながら、関係のない選手になりそうだけどね。ウチの欅トレーナーがついていたこともあって、施設協力はしたけど、準メンバーにはしなかった。もうプロに知られていたからね、実力が…。お前のところの速水拳(桜福坂)とは状況が似ているようで、似ていないってのはわかるだろ」






 神威は笑いながらうなずいた。「速水と比較なんてしていないのに…」と思いながら…。健太郎はそれを見ながら、吹き出しそうになっていた。「まぁまぁ」と鬼車を諭しながら…。






 太薙原のピッチングは冴え渡った。1球、1球、プロのスカウトたちの目も光った。鬼車の解説通り、どの球団の考えも同じだった。「高校生の即戦力投手だ」とすべてが、ぐりぐりの二重丸をつけていた。





 「空振り! 3球三振!」。KOSMOS放送の塁沢高次アナが小気味よく叫んだ。





 田江は唇をかみしめた。データ以上の、想像以上のボールが来た。3球目はかすりもしなかった。重いだけでなく、伸びも感じた。マンモスのスピードガンには「147」と表示されていたが、田江は150キロ台の後半にさえ感じた。




 守野台アルプスが俄然、盛り上がる。海斗マニア団長の香村瞳も大声を張り上げていた。




 捕手の石陪も太薙原のボールの走りのよさを実感していた。その体を気にする紀中監督には、この時点でOKサインを出した。紀中監督もうなずいた。「やっぱり、アイツはいい球を投げるよ」としみじみ思い、感心した。





 だが、次のバッターはさらに簡単ではない相手だ。太薙原もそれはわかっている。瑞泉GSコンビの「G」剣源氏が左バッターボックスに入った。





 打席に入る前、剣は早瀬から「ボールが動いている」と聞いた。三振に倒れた球がそんな感じだったという。「内側に来たような気がしたんだ」と…。田江への投球はすべて、ストレートでそんな気配はなかったが、剣は同じ左打者の早瀬の言葉を信じた。内側を意識していた。





 そんななか太薙原は石陪から出されるサインを見ながら、なぜか、ふと思い出していた。あの、まさかの出来事を…。

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