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zoom RSS 第273球

<<   作成日時 : 2008/10/06 04:02   >>

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 バットを2、3回、振ってから打席に入った。ピッチングよりバッティングが好き。自分が取られた分は自分で取り返してみせる、と意気込んでいた。ドデカイ、とてつもない相手であることは、わかっている。燃えた。同時に打ち崩す自分の姿を想像した。想像できた。ライバルは3本塁打。続こうと思った。



 瑞泉(西東京)の3番打者・GSコンビの「G」剣源氏は気合の表情だった。スタンドの「ゲンジ」コールのボルテージも上がった。





 ライトスタンドに白球が吸い込まれる。イメージした。あの快速球をとらえる。内角球をおもいっきっり引っ張ったく。狙い球が来たら、迷わず、振りぬく。それで対応できる。そう思った。





 親友であり、ライバルのGSコンビ「S」早瀬将吾は1試合3本塁打、対して剣は2打席連続ホームランは放ったものの、4回の3打席目は空振り三振に倒れた。だが、4打席目の早瀬は空振り三振。ここで剣も一発、ぶちかませば、また同じ成績になる。1点差。まずは塁に出なければ、と思いながらも、正直、ホームランの欲もあった。切磋琢磨の1年生GSコンビ。こんな大舞台でも、そんなことを考えられるのも、レベルが違う証拠なのかもしれない。





 「初球から内角に来たら、いくぞ」と思っていた。打席に入る前に早瀬から「ボールが動いている」と言われた。それもしっかり頭に入れて、そう考えた。ちゃんと準備した。






 守野台(兵庫)のエース・太薙原紘一は投げられる喜びでいっぱいだったのかもしれない。とても快感だった。今までで一番調子がいいような気がした。肩が軽かった。うれしかった。




 ずっと投げられなかったことさえ信じられなかった。「なんだったんだろうな、あれって」とも思った。そして、思い出された。県大会決勝進出を決めた夜のことを…。










 「椿! どうした? えっ? わかった、先に行ってるぞ」 




 毎日、行っていた太薙原と守野台2年生・椿直広との秘密練習。それは県予選中であっても関係なく続いていた。試合があった日も、休まなかった。




 アンドロメダトレーナーの欅重次郎に用意してもらった室内練習場。肩、ヒジの不安を取り除いてくれた欅はアメリカに戻ったが、太薙原は夏の甲子園が終わるまでは借りられるようになっていた。





 学校から走っていける場所。太薙原と椿は練習場に入る前で、その、すぐそばの公園の片隅で軽いトレーニングをするようにしていた。外の空気を思いっきり吸うのが心地よかった。うまい具合に通りからは、死角になるところも見つけた。女性ファンなども多かったが、練習場も含めて、この場所はまったく気づかれなかった。





 いつもは学校から椿とともに走って、その場所に向かう。学校からは裏に抜け道があって、そこさえ通れば、あとは誰にも気づかれることはなかった。






 その日は椿がもたもたしていた。太薙原がせかすと椿は「先輩、ちょっと腹具合が悪いので、すみませんが先に行ってください。すぐに追いかけますから」と頭を下げた。それで、1人で先に走った。





 椿の腹痛は嘘だった。彼女に電話するためだった。準決勝の朝に告白した。どうしても秘密練習に行く前に、この日、2度目の電話をしたかった。それは太薙原もわかっていた。腹痛と聞いて、ピンと来ていた。なぜ、その日に告白することになったのかはわからなかったが、これでも、一応、配慮したつもりだった。






 抜け道から勢いよく飛び出して、秘密練習の場所にはあっという間についた。いつも通り、誰にも気づかれずにここまで来た。






 「さてと、先にやっているか」






 椿はまだ来ない。恐らく、電話が長引いているのだろう、と太薙原は思い、ふと公園のいつもの場所に寝転がった。空を見た。日が沈みかけていた。翌日は決勝戦。ついにマンモス切符まで「あと1」にまで来た。「いよいよだな」と空を見ながら思った。自信もあった。行けない自分は想像できないほどの手ごたえがあった。





 そんな時だった。




 女子学生の声が聞こえてきた。




 「すごい、いい人を見つけたの…」って…。

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コメント(2件)

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 初めてコメントさせていただきます。

 漸く、1話から全て読み終わりました。

 続きを楽しみにしております。
MAR
URL
2008/10/07 21:40
MARさんへ。
一気に読んでいただいたなんて、ありがとうございます。感謝です。こんな調子の野球小説ですが、どうぞ、よろしくお願いします。
妃垣俊吾
URL
2008/10/08 03:22

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