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zoom RSS 第274球

<<   作成日時 : 2008/10/13 02:49   >>

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 女子学生の明るい声が聞こえた。うれしくて、たまらないって感じで、その声はまさに弾んでいた。聞いている人間までハッピーな気分になるような声だったという。太薙原紘一(守野台)はその声を寝転んだまま、聞いていた。自然と微笑みながら…。だが、その後に…。



 マンモス決勝戦、太薙原は瑞泉(西東京)の3番打者・GSコンビ「G」剣源氏に1球目を投げ込んだ。ダイナミックなフォームからズバッと、ストレートを外角に決めた。



 剣はこれを、まずは見た。実はボールと思った。だが、ギリギリいっぱいに入っていたのだろう。判定はストライクだった。そして思った。「やはり速い」と…。



 太薙原のストレートは球速では測れないものだった。148キロ。マンモスのスピガン表示はそう出ていたが、打席の感覚はもっと速く感じさせる。剣もそうだった。




 2球目を太薙原はテンポよく投げ込んだ。今度は内角だ。



 待ってました、とばかりに剣は打ちにいった。




 「とらえた」



 そう思った。タイミングもあっていた。内側のボールを意識して、スタンドに叩き込むイメージ通りの感覚だ。




 だが、打球は外野スタンドではなく、一塁側スタンドに吸い込まれた。ファウルだ。



 剣は納得いかなかった。「なぜだ」。タイミングは合っていたはずなのに、手ごたえがなかった。




 カウント2−0。あっという間に追い込まれた。そして、剣もまたこう思った。「3球勝負で来そうな気がする」。




 当たりだった。太薙原と石陪歩の守野台バッテリーは1球、遊ぶことなど考えてもいなかった。






 守野台アルプス席では、太薙原の両親が見守っていた。落ち着いてはいない。1球、1球、ハラハラしながら見ていた。体が心配だった。「本当に大丈夫だろうか」。1球ごとに、そう思っていたという。隣にいた女性も同じ気持ちだった。




 決勝進出を決めた夜、太薙原は秘密練習を行っていた。アンドロメダ・欅重次郎トレーナーの協力により、2年生の椿直広と一緒に汗を流すのが日課だった。翌日に決勝戦が控えていても、夕方から夜にかけて、そこで調整するのは、もうリズムになっており、やめることは考えてもいなかった。



 その日は椿が彼女に告白した日でもあった。その彼女に電話するために、椿は秘密練習に遅れた。太薙原が先に行っていた。誰にも気づかれない、見られない公園でのトレーニングも先に始めていた。




 そんな時に聞こえてきた。




 「すごい、いい人、見つけたの。すごくいい感じ。もう大ファンになったわ」 




 女子学生らしき声だ。公園に面する路地から聞こえてきた。もう、暗くなっている。道には街灯もなく、その時間は人通りも少ない。太薙原たちのトレーニングにはだから最適でもあった。だから、女子学生の声には珍しいな、と思った。無茶苦茶、うれしそうな声だった。太薙原も女子にもてたが、その時の声を聞いても、不思議と自分のこととはまったく思わなかったそうだ。実際、太薙原のことではなかったが…。



 そして、女子学生の声が通りすぎて、1分もたたないときだ。また声が聞こえてきた。今度はひそひそ声。しかも複数の男の声だった。



 静かな場所で、太薙原は静かに汗を流していた。耳を澄ませば、何でも聞こえた。



 しかし、その男たちの声には太薙原も反応するしかなかった。立ち上がった。椿を待っている余裕はなかった。




 まだ、遠くで女子学生の弾む声が聞こえてくる。その背後に男たちが…。 




 太薙原は路地の方向に飛び出していた。実はこの秘密トレーニングスタート以来、そこに出たのは初めてだった。でも、もう夢中だった。



 「おい、お前ら!」



 そう声を荒げていた。それから…。



 



 マンモス決勝戦。


 太薙原は剣に対する3球目を投げた。




 剣は「えっ」と思った。真ん中に来たからだ。「なめるな!」とも思った。147キロ。もちろん、打ちにいった。
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ご訪問、ありがとうございます。

応援凹完了。
Claptan
2008/10/13 12:18
Claptanさんへ。
コメントありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
妃垣俊吾
URL
2008/11/18 02:51

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