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zoom RSS 第275球

<<   作成日時 : 2008/10/19 02:21   >>

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 声を荒げて走った。もう、やみくもに走っていた。後先のことは考えていなかった。ただ、動いた。動かないとヤバイことが起きる。そう判断した。「おい! お前ら!」。もう一度、叫んだ。いくつかの黒い影が一斉に動いた。その先を歩く、明るい声はまだ響き渡っていた。


 カウント2−0からの3球目、守野台(兵庫)のエース・太薙原紘一は思いっきり、腕を振りぬいた。捕手・石陪歩のミットがはっきり見えた。視線にブレはなかった。この時は…。




 あの日、太薙原は気がついたら表に飛び出していた感じだった。今、ここで自分が動かなければ、どうなる、と考えた。動かなければならない、と思った。ちょっとだけ、練習に遅れている後輩の椿直広の到着を待とうか、との思いがよぎったが、いやいや、そんなことを考えている場合じゃない、それじゃあ、間に合わない、と、すぐに打ち消した。



 飛び出したとき、黒い影は4つほどあった、と思う。危険な空気が漂っていたと思う、という。



 その前方の明るく、元気に、幸せそうな声を発する女子学生は、まったく、そんな緊迫ムードに気づいていない感じだった。それほどまでにケータイでの話に夢中になっていた。ケータイを持つ反対側の手には青いハンカチ。それを大事そうに握っていた。




 「お前ら!」



 太薙原の声に4体の黒い影は揃って反応した。




 「○×△□」「△☆×★」「○○△…」「★……○」



 なにやら声を掛け合いながら、こちらもまた走り出した。一気に女子学生に近づいた。すぐ後ろにまで迫った。




 「もう大ファンになったわ」。



 女子学生はそれでも気づかずにしゃべり続けている。よほど、うれしく興奮していたのだろう。静寂の夜道に声が響き、そして、その背後に怪しげな影が…。



 女子学生の前方。あと50メートルほど歩くと車の通る道に出るところに、ワゴン車が見えた。



 「お前ら!」



 走りながら太薙原も夢中で声をあげた。その声にはじめて、女子学生が気がついてくれたような…。振り向いてくれたような…。想像以上に可愛い顔をしていたような…。




 4体の黒い影のうち、1体がスピードをあげ、女子学生を追い越した。1体は急に止まって、太薙原の方を見た。そして残り2体は…。




 光った…。






 マンモス決勝戦、7回表一死走者なし。太薙原は瑞泉(西東京)GSコンビ「G」剣源氏に3球目を投げ込んだ。



 「何!」。剣は思った。 




 ど真ん中に来たからだ。




 迷わず振った。フルスイングだ。タイミングもあっている。いける、と思った。




 「ゲンジ」コールで盛り上がっていた瑞泉アルプス席が一瞬静まった。それから、すぐに…。



 「ストライク!」



 球審の判定とともに、KOSMOS放送の塁沢高次アナも叫んだ。




 「空振りぃ!」

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