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zoom RSS 第277球

<<   作成日時 : 2008/11/02 02:16   >>

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 マウンドをならしながら、集中しようと思った。もう1点もやるわけにはいかない。これ以上の失点は致命傷になる。相手を見て、そう思った。でも自分が抑えれば、必ず勝機はある、と思った。アイツは二度、同じやられ方はしない。そう信じていた。必ず、そうなる、と確信していた。




 瑞泉(西東京)のGSコンビ「G」剣源氏は1球、1球、丁寧に投げ込んだ。ひとつのミスが命取りになる。その思いから、いつも以上に繊細な投球になった。まぁ、これが最初からできていれば、いつもできていれば、この試合だって、展開は変わっていただろうに…。



 7回裏、1点リードの守野台(兵庫)の攻撃は5番・飛葉からだった。大黒柱の太薙原紘一の快投でチームは間違いなく、活気づいていた。試合の流れをつかんだ、つかんでいる、とナインの誰もが信じてプレーしていた。



 だが、剣のピッチングの方が守野台ナインの気迫、気持ちよりも上回っていたのかもしれない。飛葉は2球目をひっかけてピッチャーゴロ。6番・嶋居はカウント2−1からレフトフライ。7番に入っている太薙原は三振に倒れた。






 「背番号1はバッティングの方はもうひとつばいね」。マンモスのネット裏最上段に陣取るアンドロメダ九州地区担当調査員の神威小次郎がサブリーダーの鬼車寅吉に問いかけるように話した。


 「いや、決してまったくダメではないんだけどね。今回は剣君の投球がよかったってことじゃないかな」。鬼車は感じていた。剣のボールのキレが一段とよくなり、何かをつかんだような投球になったと…。



 「でも1点差は瑞泉にとっては重そうだなぁ。太薙原君のあの投球が続けば、簡単には高校生レベルでは攻略できないのではないかな」。そう話したのはリーダーの大田原健太郎だ。これには鬼車も神威もうなずいた。




 そして、神戸の豪腕・太薙原のピッチングは8回表も素晴らしかった。瑞泉の5番・白薔薇を三振、6番・経谷も三振、さらに7番・紀河も三振だ。すべてストレートだった。各打者ともに、バットに当ててもファウルにするのが精一杯、という感じだった。



 KOSMOS放送の塁沢高次アナは大絶叫だ。


 「三振! また三振だぁ! これで太薙原はマウンドにあがった6回二死からアウトカウントはすべて三振!7連続三振です!」




 「すごいヤツがいたもんだな」。瑞泉の風喜監督も思わずうなっていた。正直、これほどの投手とは予想していなかった。予選ビデオよりも百倍は違う、と思っていた。



 実際、風喜監督の言うとおりだった。だって、守野台の紀中監督も同じことを考えていたのだから。病み上がりの休み肩だったのが、よかったのだろうか。この大舞台で太薙原は高校生活最高の投球を見せていた。




 「体は大丈夫か」。ベンチに戻ってきた太薙原に紀中監督は声をかけるのは忘れない。「大丈夫です」と答えるエースがとても頼もしかった。




 一塁を守る太薙原の練習パートナーの椿直広もホッとしていた。あの夜のことを思えば、あの後のことを思えば、信じられない気持ちでもあった。








  「先輩! どうしたんですか! 先輩! しっかりしてください」



 地区予選準決勝を勝ち上がった夜、椿は秘密練習場近くの歩道で大きな声をあげていた。太薙原がひとり、倒れこんでいた。気を失っていた。救急車を呼んだのも椿だ。周りには誰もいなかった。



 彼女に電話をするために、太薙原よりも遅れて、練習場所に着いた。アップをする、いつもの公園に着いたが、太薙原がいない。「どうしたんだろう。もう終わったのかな。いつもよりも早めに切り上げたのかな」。そう思って、アンドロメダが用意してくれた施設に向かおうとしたときだ。


 声が聞こえた。言葉はよく聞き取れなかったが、叫び声が聞こえた。太薙原の声だ。



 「何が…」。椿はその方向に走った。薄暗い路地を走った。そして大きな通りの歩道に太薙原が倒れていたのだった。




 数時間後、太薙原は病院のベッドで気がついた。外傷はあまりなかった。だが…。



 まっすぐ歩けなかった。深刻な事態だった。

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