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zoom RSS 第282球

<<   作成日時 : 2008/12/07 03:35   >>

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 サイレンが鳴り響いた。守野台(兵庫)対瑞泉(西東京)。マンモスには両軍サイドの声も響いた。スタンドの両軍サイドからも同じような声が…。KOSMOS放送の塁沢高次アナの声はかすれきっていて、聞き取りにくかった。雨上がりの空の色がなんとも言えない色にも見えた。




 「早瀬!」



 「将吾!」



 「太薙原!」



 「先輩!」




 マンモス決勝戦。瑞泉アルプスでは1年生GSコンビ「S」早瀬将吾の父・達将が一目散にスタンド最前列に走りこんでいた。「将吾!」。そう叫ぶ声は涙声だった。その後方で母・愛子と妹・瑠未は「お父さん、早く!」とこちらも涙声で叫んでいた。



 守野台アルプス席ではエース・太薙原紘一の両親が慌てて動き始めていた。看護婦・愛埜望は「紘一君!」と思わず叫んでいた。




 瑞泉ベンチから真っ先に飛び出してきたのはGSコンビ「G」剣源氏だ。気が動転していた。「将吾!」。ただただ、何度も…。風喜監督やナインも…。




 守野台の一塁を守る椿直広はホーム付近を一瞬だけ見て、すぐに駆け出した。「先輩!」と大きな声を張り上げながら…。紀中監督やナインはまだ何が起きたのか、よくわかっていない感じだった。いや、わかっていたのだが、わからないこともあった。




 KOSMOS放送の塁沢アナも冷静になれなかった。



 ネット裏のプロスカウト陣もざわついた。最上段に陣取るアンドロメダの面々も呆然とグラウンドを見つめるしかなかった。スタンドはどよめくばかり。悲鳴さえもあがっていた。




 「タンカ! タンカ!」。剣が大声で叫んだ。言われなくても関係者も動いていた。




 「た、た、た、たいへ んなことになりました」。塁沢アナはこう言っていたつもりだった。動揺していた。声もかすれて、なおさら…。




 「お父さん、早く!」


 瑠未が達将にもう一度、声をかけた。



 ネットに張り付いていた達将は無言で振り返り、愛子と瑠未とともに階段をかけあがり、すぐに今度は駆け下りた。騒然としたムードのなかで3人とも急ぎ足、顔色は失っていた。



 同じように愛埜望も階段を上がって下りた。取り乱さないように必死だった。太薙原の両親を抱えるように連れていた。





 「先輩! 」。マウンドで椿が涙声だった。



 「将吾!」。バッターボックス付近では剣が涙声だった。




 KOSMOS放送の中継ではVTRが流されていた。



 プレスルームでは首都タイムズのアマチュア担当記者の樹鞍諒一ら報道陣が、もう一度、画面に注目していた。




 7−6。守野台が1点リードで迎えた9回表。瑞泉の攻撃も二死走者なし。守野台の全国制覇まで、あとアウトカウントひとつ。ピッチャーはここまで驚異の9連続三振を記録していた太薙原。バッターはこの試合3打席連続でホームランを放っていた早瀬。ボールカウントは2−2。その5球目だった。





 太薙原は大きく振りかぶった。独特なフォーム。足が真一文字に高く上がった。そして外に動くボールを…。



 それが、まさかのボールだった。


 それが、まさかのボールになった。




 サイレンが鳴り響いた…。

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