アンドロメダ

アクセスカウンタ

zoom RSS 第283球

<<   作成日時 : 2008/12/15 03:46   >>

トラックバック 0 / コメント 0

 騒然、異様なムードのなかで試合は再開となった。だが、守野台(兵庫)、瑞泉(西東京)両軍ナインともに、表情はさらに硬かった。気持ちを切り替えなければ、と誰もが思ってはいたのだが…。9回二死。まさか、こんなヤマ場がこようとは…。スタンドの盛り上がりもやはり、それまでとは違っていた…。



 守野台のマウンドには2年生の椿直広があがっていた。6回に2番手として登板して打者2人を無安打にうちとっていたので、この決勝戦、2度目の登場だ。独特のフォーム「ロボット投法」で相手のタイミングを狂わせる。コントロールにも定評があった。



 瑞泉のバッターは2番・田江。この試合はレフト前ヒット、セカンドゴロ、三遊間ヒット、三振の4打数2安打。GSコンビの早瀬将吾と剣源氏ほどではないにせよ、チームのなかでは好調で当たっていた。振りも鋭い。



 さあプレー再開だ。しかし、両者ともに表情は硬かった。というか、ふたりともに力んでいた。7−6。あとアウトひとつで守野台の優勝が決まるのだが、特に椿の方はガチガチだった。



 守野台の一塁には京成が入った。瑞泉の一塁ランナーは代走の喜沢。KOSMOS放送の塁沢高次アナがかすれた声で改めて選手交代を説明していた。ちょっとだけ、落ち着いた感じで…。




 球場全体、みんな、まだ、約10分前の出来事が信じられずにいた。6回途中からリリーフし、9連続三振の驚愕の投球を続けていた守野台のエース・太薙原対3打席目までいずれもホームランの離れ業を演じていた瑞泉GSコンビ「S」早瀬。カウント2−2からの5球目に、あんなことが起きるなんて…。




 「よりによって…」。マンモスのプレスルームで首都タイムズのアマチュア担当記者の樹鞍諒一がつぶやいていた。病院まで追いかけている後輩記者の連絡を待ちながら…。「たいしたことなければいいが…」としみじみ思った。樹鞍だけではない。誰もが2人の無事を祈っていたのではないだろうか。特に早瀬の方の…。




 



 それほど衝撃的なシーンだった。





 5球目。周囲が「あっ」と思った時には悲劇が起きていた。マンモスのスピードガンには皮肉にも、この試合、太薙原の投じたMAX「152」の表示があった。




 その剛速球が早瀬の頭部にもろに直撃したのだ。





 打ちにいっていた。踏み込んでいたのかもしれない。よける間もない感じだった。




 表現できないような音がした。早瀬が崩れるように倒れた。ボールはポロリとその場に落ちた。ピクリとも動かなかった。





 スタンドからは悲鳴があがった。瑞泉ナインが駆け寄る。GSコンビの「G」剣が真っ先に飛び出した。






 その時、一塁を守っていた椿はマウンドに走った。マウンドでは投げた太薙原も倒れ込んでいたからだ。正確に言えば、倒れたのは早瀬よりも太薙原の方が早かった。こちらもピクリとも動かなかった。信じられないことに気を失っていた。





 事情は投げた本人にしかわからないが、どうやら、投げる瞬間に体に何か異変が起きたようだ。捕手の石陪歩は外側に構えていた。太薙原も外に逃げるボールを投げるつもりだった。それが…。県予選準決勝の夜に事故に巻き込まれ、入院生活を送っていた男の見事な復活劇だったが、やはり、どこかで体にまだ無理があったのだろうか。






 それぞれがタンカに乗せられ、ベンチに運ばれた。救急車が到着した。その時、グラウンドは試合再開に向かっていたが、まさに異様なムードだった。









 「あのときと一緒だ」。マウンドの椿は動揺していた。県予選準決勝の夜に見た太薙原の顔とさっきマウンドで倒れ込んでいた太薙原の顔が完全にだぶった。様子、雰囲気、すべてが同じだった。




 「やっぱりまだ無理だったのではないか。かなり無理していたのではないか」。椿は思わずにはいられなかった。




 ベンチでは守野台・紀中監督が「オレが無理させてしまったのではないか」と自分を責めていた。珍しくベンチに座り込んだ。早瀬の容態が容態だけに、とんでもないことになった、と申し訳ない気持ちでいっぱいだった。震えた。立っていられなかった。




 瑞泉のネクストバッターズサークルでは剣がバットを黙々と振っていた。早瀬のことが心配で心配でたまらなかった。ピクリとも動かなかった親友の姿を見て、冷静ではいられない。気がつけば、バットを振っていた。そして振りながら思った。「この試合、もう負けられない」と−。




 カクッ、カクッ、カクッ。椿は田江に投げた。独特のロボット投法で…。




 田江は肩の力が入りすぎているような構えだった。入れ込んでいた。おそらく振っても当たらなかっただろう。




 だが、田江が振ることはなかった。椿はストライクが入らなかった。あれほどコントロールがよかったのに、まったくダメだった。ストレートの四球だ。




 1点を追う瑞泉、9回表は二死一、二塁。そして打席に剣が向かう。「負けない!」と誓いながら…。




 椿対剣。



 その第1球はなんと…。



 

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

メルマガ野球小説アンドロメダ

メルマガ登録・解除
野球小説アンドロメダ

読者登録規約
>> バックナンバー
powered by まぐまぐ!
 
第283球 アンドロメダ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる