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zoom RSS 第284球

<<   作成日時 : 2008/12/15 04:00   >>

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 へなへなと座り込んだ。力が抜けた。まさか、こんなことに…。マンモスのざわめきもBGMみたいな気がした。画面を通じても、それがわかった。そんななか周囲は慌しかった。サイレンが近づいてきたからだろう。同じ場所に集結することになるなんて、もちろん思ってもいなかった…。



 瑞泉(西東京)1年生GSコンビ「S」早瀬将吾の父・達将は平常心ではいられなかった。過去の自分の恐怖の記憶もよみがえってきた。「なぜ」「どうして、また」…。運命のいたずらにしては酷だった。救急車を追いかけるようにタクシーに乗り込んだ。マンモス前のガード下は混んでいたので、近くのホテルから乗った。とにかく行くしかなかった。早瀬の母・愛子、妹・瑠未と3人で…。病院名は役員入り口のところにいてくれた瑞泉関係者に聞いた。



 どの道をどう通ったのか、どこを走っていたのか、まったく覚えていない。そんなことを考える状態ではなかった。とにかく息子の顔が早く見たかった。息子を元気づけてやりたかった…。




 同じように守野台(兵庫)のエース・太薙原紘一の両親と看護婦の愛埜望もタクシーに乗っていた。両親は息子のこともそうだが、死球を与えた相手のことも気になっていた。「大丈夫だろうか」。ピクリとも動かなかった2人。でも早瀬のことをまず気遣った。望は無言だった。でも止まらなかった、涙が。「やっぱり紘一君を私が止めなければいけなかったのに…。」と心の中で何度も何度も悔やみながら…。




 病院についた。試合途中に治療のために球場を出た守野台の1年生投手・飛浦海斗が向かったところと同じだった。救急入り口が騒々しかった。ロビーのテレビの前でたたずんでいた飛浦は近づこうとしたが、そんな雰囲気ではなかった。まさに一刻を争うような空気が流れた。




 テレビの前には多くの患者たちがいた。まだ、ここもどよめいているような感じだった。





 神奈川マジックスタジアムではGSコンビ「G」剣源氏の父・源之助が動揺していた。早瀬の父・達将の気持ちを考えると、とても…。と同時に高校時代の、あのシーンが、嫌でも思い出された。「将吾君、無事でいてくれ!」。心の底からそう思っていた。



 マンモスのプレスルームでは首都タイムズのアマチュア担当記者の樹鞍諒一が病院に追いかけた部下からの電話を待っていた。「GSコンビ」の命名者。早瀬と剣に関しては他の記者にはない思い入れがあった。2人のエピソード満載の優勝原稿を準備していた。この大会で一気に全国区スターになった2人にふさわしい内容のもので勝負するつもりだったのに…。





 KOSMOS放送の塁沢高次アナの声はかすれたままだった。「早瀬君と太薙原君の容態が気になります。情報が入り次第、お伝えします」。あの後、何度も何度も、この言葉を繰り返していた。




 ネット裏最上段に陣取っていたアンドロメダの面々は最後まで席を離れなかった。プロ球団のスカウト連はさっと球場を出るが、彼らは違った。リーダーの大田原健太郎は選手たちの表情を見ながら、九州地区担当調査員の神威小次郎になにやら、声をかけていた。



 サブリーダーの鬼車寅吉は携帯電話で話していた。「そうですか。わかりました。たぶん、そうなるのではないか、と思っていました。リーダーには私から伝えておきます」。落ち着いた口調だった。





 グラウンドでは閉会式が行われようとしていた。優勝チーム、準優勝チームへの表彰が始まる。スタンドからは拍手が沸き起こっていた。ついさきほどの涙の勝利監督インタビュー、そして、涙、涙のナインのインタビューの余韻もあった。




 健太郎も拍手していた。鬼車も、神威も…。




 テレビの前で剣源之助も息子の姿を見つめていた。早瀬父子のことを思いながらも、この時ばかりは「よく頑張ったぞ、源氏」とつぶやいていた。




 源氏の目は真っ赤だった。その後の早瀬将吾の情報はまだ入っていなかった。




 守野台・椿直広の目も同じように真っ赤だった。まだ立ち直れない感じだった。太薙原の顔がちらついた。県予選準決勝の夜と同じだった顔がどうしても…。




 壮絶すぎた「太薙原対早瀬」の後、椿はリリーフでマウンドに上がった。しかし、動揺していた。普通ではなかった。だから…。




 「守野台! 守野台! 守野台!」



 スタンドでは香村瞳ら海斗マニアたちの声が響いていた。

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