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zoom RSS 第291球

<<   作成日時 : 2009/02/09 00:34   >>

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 夏の終わり、神奈川マジックの高杉明太郎は驚きの声をあげた。「なぜ、どうして」。そう言いたかった。でも、あまりに真剣な表情にそう言えなかったという。半分、頼もしく見えたからだという。「いつのまにやら…」と思った。そして最後には「その代わり、後悔するな。前を向いてやれ!」とハッパをかけた。



 マンモス大会終了後のアンドロメダの会議でリーダーの大田原健太郎は各調査員を前にして、愛知・にしき水惣の野球部解散と東東京・真極学園のアンドロメダメンバー・古城直人の退学を報告していた。いずれもどよめきが起きたのは言うまでもない。



 「古城には何があったとですか。 家庭の事情ですか。退学してどこに行くとですか。オーストラリアに戻るとですか」。古城の件では九州地区担当調査員の神威小次郎が真っ先に質問した。




 健太郎は順を追って説明した。




 引き金になったのは、真極学園が3回戦敗退の翌日、学校に届いていた古城宛の手紙だ。




 学校に戻って受け取った古城は目を丸くした。だって、差出人の名前が「HIKIBA」となっていたからだ。古城が子供の頃、豪州キャンプにやってきた京都ジャックの投手と野手の二刀流選手・火牙と出会った。口から血を流しながらトレーニングする火牙のことを、古城は「赤いおじさん」と勝手に名づけたものだ。野球をやることになったのも、その時に火牙を見たから。「日本で甲子園大会に出れば、また会えるかもしれない」と思って、練習した。健太郎に日本行きを勧められたときも「甲子園」の響きが決断理由にもなったほど。火牙はその後、現役を退き、球界関係者の間でも行方知れず、と言われていた。「もしかしたら、亡くなったのではないか」。そんなふうに思ったりもしたもの。その「赤いおじさん」から何と手紙が送られてきたのだ。




 「にしき水惣戦で久しぶりに君の姿を見た。もしかしたら、と思ったが、やはり君だった。君は覚えていないかもしれないけど、なぜだが、私には君のことは印象深かった。わずかな時間しか会っていなかったのに、ね。あれから私にはいろんなことがあった。つらいこと、悲しいこと…」。手紙は、こんな書き出しから始まっていた。




 信じられなかった。たった数分しか会っていない子供のことを、ここまで覚えていてくれたのが信じられなかった。もちろん、うれしくて、うれしくてたまらなかった。



 古城は手紙を夢中になって読んだ。興奮していた。「あの時、赤いおじさんは球場にいたのかな。それともテレビで見たのかな」。答えはわからなかったが、想像することもうれしかった。夢がかなったような気分だった。



 もっとも、この時の古城はよくわかっていなかった。なぜ、こんな手紙が来たのか。それにもつながる火牙の秘密を…。




 そんな古城が真極学園を去ることまで考えたのは、手紙の最後の方にこう書かれていたからだ。




 「君はアールと対戦したようだね。彼は君をもっと強くすると思う。そして、その時、君と久しぶりに会えると思う。頑張ってくれ!」




 真極学園は東東京予選前にグアムに遠征した。秘密兵器・四天王はそこでデビューを果たしたのだが、その時、途中出場して立ちふさがったのが、謎の覆面投手・アールだった。その剛速球に古城のバットはかすりもしなかった。



 「あの試合のことは知っている人は少ないはずなのに…」。古城は思った。「赤いおじさんとアールは関係あるのだろうか」とも…。



 古城の行き先はグアムだった。火牙に導かれたように、日本行きを決めたように、今度はグアムにいくべきなんだと考えるようになった。そんな短絡的な、と思われることだろう。でも古城は真剣だった。いろんな人に迷惑をかけるので迷いはした。でも、最後は、もうこの気持ちを止めることはできなかった。



 実は真極のグアム遠征には健太郎もちょっと絡んでいた。アールのことも知っていた。よく知っていた。正直なところ「アールといい、古城といい、これも運命なのだろうか」とさえ考えていた。




 こんな話を健太郎はアンドロメダ調査員たちにも説明した。9月から古城はグアムの高校に転校することになった。アールと切磋琢磨するために…。




 しかし、さすがの健太郎も、真極学園・高杉賢明のことまでは知らなかった。古城に聞いて初めて知った。高杉もまた、真極を去ることになっていた。



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