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zoom RSS 第297球

<<   作成日時 : 2009/03/23 02:16   >>

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 スタンドにいたソニックの火牙スカウトがピクッとなった。自然となった。それから後ろを振り返った。最上段にいるアンドロメダの面々たちの姿を見た。「もしかして、彼らはこれを…」と思っていた。彼らが好きそうな選手と思ったからだ。「プロなら今のでピンと来るよなぁ」と再び、マウンドに目を向けた。



 リーダーの大田原健太郎らアンドロメダ勢は近くのグラウンドで行われた準硬式のスラッガーをチェックに集まっていた。たまたま、その球場で大学4部リーグの北斗星大対海流清大の試合が予定されているのを知り、「せっかくだから、見に行きましょう。以前、皆さんがチェックした選手もいるでしょうから。準硬式の彼のことはそこで話をしましょう」と健太郎もいい、ぞろぞろと…。九州地区担当調査員の神威小次郎が「野暮用」とかで、遅れていたが、サブリーダーの鬼車寅吉、北海道地区調査員の架嶺雄大らが、そのスタンドに陣取っていた。マンモスでもそうだったように、最上段に…。




 「やっぱり、見に来てよかったですね」。架嶺が鬼車にそう話した時、もう健太郎の姿はそこになかった。「相変わらず、あの人は動きが早いよな」。鬼車は少々、あきれ口調だった。




 この回からマウンドに上がった北斗星大4年・日向太良が健太郎を動かした。打者3人目に投じた1球目。それまで右で投げていた日向が突然、左から投げた。そのボールだ。



 「うわっ!」。その瞬間、打者は思わず、そんな声を上げていた。無理もない。大げさな話、顔面付近にボールが来たように見えたという。その通り、よける動作も見せていた。



 日向が投げたボールはバックネットに突き刺さっていた。まるで漫画だった。後日、日向も「本当にあんなことってあるんですね」と他人事のように振り返っている。



 左腕から投じた球はストレート。それも物凄いスピードだった。球速は「155」と表示されていた。でも誰も表示ミスとは思わなかった。右腕からは120キロ台だっただけに、その差も歴然だった。無茶苦茶、速く見えた。バッターの頭上を越え、さらにスピードに乗って、バックネットまでいってしまった、という感じだった。



 健太郎はそれを見て、すぐにケータイを取り出し、渋谷・宮益坂の本部に電話した。「北斗星大の資料を出してください。次の選手のチェックを頼む。いい? 4年生、日向太良。名簿には確かに載っているから、何かあるんじゃないか、と思うけど…。うん、そうそう。わかったら、連絡して。それじゃあ、頼むね」。そう話しながら、移動していた。北斗星ベンチの方向へ…。



 ネット裏の北斗星大野球部員たちも驚きの声をあげていた。


「すげぇな。今の球。先輩があんな球を投げるなんて…」


「いつも、まともに俺たちと練習していないから、誰も知らなかったんじゃない。ほら、ベンチの下田監督もびっくりしているぞ、やっぱり」


「ホントだ。まぁ、でも、そうなるよな、今の球を見れば…。でも、なんで最初は右から投げたんだろう。だって、先輩はもともと左ききだったはずでしょ」


「そうだよな。まぁ、すごい球をビデオで撮ることができてよかったけどね」 




 この時、それに気がついていれば、火牙が先に、そのビデオを拝借できたかもしれない。試合後では遅かった。もう「予約」が入っていた。アンドロメダの…。



 そんな周囲の騒ぎも知らずにマウンドの日向は「やっぱりダメだ。思いっきりは無理だ」とつぶやいていた。大学入学後は1人で練習することが多かったが、この左の投球に関しては、どうにもならないことがあった。力を込めて投げると、コントロールがまったく定まらないことだ。正直、行き先はボールに聞いてくれ! という状況だった。さっきの球もそう。この試合も右投げの方が安定感があったから、そうしていただけだった。



 カウント0−1からの左腕・日向の2球目もストレートだった。だが、今度は一転して97キロ。これくらいまでスピードを落とさないとコントロールは無理だった。もっとも、打者には腰砕けの球。タイミングが合わず、キャッチャーフライでスリーアウトだ。



 「何とかみんなに迷惑をかけずに済んだ。よかった。ゼロに抑えたのはいい思い出になる」。日向はそんな風にも思っていた。左からの大暴投がネット裏で注目されているなんて思ってもいなかった。



 だが、日向が火牙スカウトやアンドロメダの面々をピクつかせたのは、これだけではなかった。だから火牙は試合後、ビデオを借りようと思った。「ウチのドラフト育成枠に推薦したい。秘密兵器になる」と…。



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