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zoom RSS 第298球

<<   作成日時 : 2009/03/30 03:20   >>

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 アンドロメダ北海道地区調査員の架嶺雄大はバッグからカメラを取り出した。望遠レンズで北斗星大4年の日向太良を追った。「架嶺さん、しっかりおさえておいてくださいね」とサブリーダーの鬼車寅吉が笑みを浮かべながら、声をかけた。「わかりました。まかせておいてください。でも、さん付けはやめてくださいよ」と架嶺も微笑んだ。



 日向は6回表に左腕から「えげつない球」を投げて、周囲を驚かせた。ネット裏からも注目されていた。架嶺はカメラを構えて、その表情をチェックしていた。「いい顔をしている。面構えは合格だな」。そうつぶやいた…。



 6回裏の北斗星大の攻撃はあっという間に二死となった。ソニックが育成枠で狙う海流清大の雷藤はやはり、ここでは力が抜けていた。ソニックのスカウト・火牙も「問題はないな」と安心して見ていた。



 そして、再びスタンドの北斗星大の学生たちがバタバタしはじめた。



 「こっちもちゃんと撮っておいてな。頼まれているんだから」 



 「わかっているよ。まかせておいて」



 「さっきの暴投もちゃんと撮れているよね」



 「大丈夫、大丈夫、さっき確認した。いい感じで撮れていたよ。迫力の画像だね」



 「でも、打つ方はどうなんだろう。先輩はほとんど練習に来なかったから、まともに打っているところを見たことがないよ」



 「前に一回だけ、見たけどな。まぁ、普通のバッティングだったよ。あっ、そういえば、打つ方は右だったな。左ききなのに、その時、思ったけど…」


 「右かぁ…。オレはまた、打つ方もスイッチかと思ったよ…ああ、やっぱり、打つ方は右だな。右で振っている…」




 6回裏二死から打席に入ったのは日向。1イニング、1打席の思い出出場で、これが大学生活、最後のプレーだった。



 「監督、いろいろ配慮、ありがとうございます。みんなもありがとう」



 打席に向かう前のベンチで日向はそう言って頭を下げていた。自然と拍手がおきた。下田監督は「悔いのないようにな」と笑顔だった。「ところで、さっきのあの球なんだけど…」と聞きたかったが、やめた。まぐれ、偶然。これまでの日向の練習状況を考えると、そう思っても不思議ではない。しかし、まぐれや偶然ではできない球でもあっただけに心は揺れたが、結局、聞かなかった。その後にさらに聞きたくなることが起きるとは、その時は想像できなかった。




 日向は右打席に入った。軽く素振りした。と、そこで…。



 いったん打席を外した。うつむきかげんで考えた。短く考えた。一瞬にして決めた。顔を上げ「やっぱり、やってみよう」。



 球審も面食らった。海流清大バッテリーも「えっ」って顔になった。日向が左打席に入ったからだ。



 「スイッチヒッターか」。マウンドの雷藤はそう思いながらも、正直、どちらでもよかった。データは何もないバッターだが、レベルは知れている。打たれるわけがない、と思っていた。自信があった。




 ところが…。




 「架嶺さん、今の、ちゃんとおさえました?」。鬼車の声のトーンがちょっとだけ上がった。北斗星大の学生たちも騒々しかった。火牙も仰天した…。



  


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