アンドロメダ

アクセスカウンタ

zoom RSS 第299球

<<   作成日時 : 2009/04/06 03:45   >>

トラックバック 0 / コメント 0

 三塁側スタンド、ベンチ上付近でアンドロメダリーダーの大田原健太郎は目を丸くしていた。「こんな選手がいるなんて…」。これまでも埋もれた人材探しに奔走していたつもりだったが、彼に関してはこれほどのデータはなかった。「手助けしたい」。即座に思った。



 敵も味方もスタンドの誰もが仰天していた。正直、打った本人も驚いていた。ダイヤモンドを一周しながら、信じられない気持ちだった。孤独の練習が出た。しかも想像以上の結果が出て、感動していた。目には涙もたまっていた。今にもこぼれそうなほど…。それをごまかそうと笑った。会心のスマイルではない。何かしら、引きつったような笑みだった。「これが最後の野球なんだなぁ…」。そう思って、どこか寂しそうな微笑でもあった。



 「今の誰ですか」



 ネット裏最上段席まで駆け上がってきたアンドロメダ九州地区担当調査員の神威小次郎は息をきらして、興奮気味に話した。女性との「野暮用」を済ませて、遅れて球場入りした途端、そのシーンに出くわしていた。



 「すごかぁ…」。見た瞬間、自然とそんな声が出た。それから一目散にメンバーが陣取る場所に走ったというわけ。階段を全速力で…。



 「北斗星大の日向太良。4年生で公式戦には、今日が初出場だよ」。北海道地区調査員の架嶺雄大が説明した。


 「4年? じゃあ、今日で試合は終わりじゃなかですか。その日向の進路はどがんなっとっとですか」。神威はまだハアハア言っていた。



 「まだ情報が完全に集まっていないから、わからないところもあるけど、ここまで、我々もノーマークの選手だったことは確かだね」



 「架嶺さんだから、ちゃんとおさえているよね。後で、もう一度、見せてください」



 「大丈夫、たまたま打席前から追っかけていたからばっちり…」



 神威も架嶺も興奮していた。アンドロメダの調査員なら、あれを見たら、そうならないとおかしい。そのピッチングもそうだったが、バッティングはさらに…。





 それほど、すさまじい打撃だった。ネット裏のソニック・火牙スカウトも驚くしかなかった。なにしろ、打たれたのはソニックが育成枠で獲得する予定の海柳清大の雷藤。その速球を完ぺきにとらえたのだから…。



 「飛距離はどれくらいでしょうかねぇ」。架嶺は隣のサブリーダー・鬼車寅吉に聞いた。



 「まぁ、計測不能かな」。鬼車は笑いながら答えた。こんな人材をこれまで知らなかったなんて笑うしかなかった。




 日向が左打席から放った打球は高く、高く、舞い上がった。低めのストレートをすくい上げたかのようなスイングだったが、とにかく飛んだ。



 ホームランになるのは打った瞬間に誰もがわかったはずだ。しかし、あそこまで飛んでいくとは…。誰もが度肝を抜かれたはずだ。




 初球を右翼スタンド場外弾。日向の大学生活、最初で最後の打席は常人のレベルを超えたホームランだった。




 ピッチングもバッティングも日向は「左」をコントロールできなかった。投げればほとんど暴投だし、打つ方でも右と違って、しっくりこなかった。当たれば飛ぶけど、どこに行くかはわからないって感じ。ほとんどは豪快な空振りだった。右なら、きっちり当てる自信があるのに、左はどうしようもなかった。



 思い出のラストプレーでは、投打ともに安定感ある「右」できれいに勝負するつもりだった。でも土壇場で、何も考えずに思いっきり「左」で勝負しようと決めた。まさか、こんな結果が出るとは、それこそ思ってもいなかったという。




 北斗星大の下田監督は日向に「次の回も行ってみようか」と言った。これで「終わり」にするのはもったいない、と思った。まだ見たい、さらに見たい、と思った。選手たちも異論はなかったはずだ。



 だが日向は「いや、これで終わりです。そういう約束ですから」と首を振った。同級生ナインが「日向、もう1回、もう1打席、構わないよ」と下田監督に同調しても「約束だから」と…。




 「野球はこれで終わりだから」と改めて言った。





 「あれ? 日向って交代ばい」。神威は納得できない口調だった。「まだ見たかったね」と架嶺も驚いていた。想像もしていなかった。日向の野球がこれで終わる、ということを…。




 試合後、健太郎は北斗星大のベンチ裏にいた。日向のピッチングビデオを北斗星大部員から借りる手はずをすばやく整え、監督や本人に会うために…。



 健太郎だけではない。火牙スカウトもいた。プロ球界とアンドロメダが…。



 
  • 前球(第298球)へ


  •  
  • 次球(第300球)へ

  • テーマ

    関連テーマ 一覧


    月別リンク

    トラックバック(0件)

    タイトル (本文) ブログ名/日時

    トラックバック用URL help


    自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

    タイトル
    本 文

    コメント(0件)

    内 容 ニックネーム/日時

    コメントする help

    ニックネーム
    URL(任意)
    本 文

    メルマガ野球小説アンドロメダ

    メルマガ登録・解除
    野球小説アンドロメダ

    読者登録規約
    >> バックナンバー
    powered by まぐまぐ!
     
    第299球 アンドロメダ/BIGLOBEウェブリブログ
    文字サイズ:       閉じる