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zoom RSS 第302球

<<   作成日時 : 2009/06/08 03:01   >>

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 「彼」は生活のために必死だった。それが今のすべてだった。1回成功したら、その評判は口こみで広がった。「最高レベル」はなかなか難しかったが、その日の食事は何とか確保していた。アンドロメダ北海道地区担当調査員の架嶺雄大が初めて会った時は、ちょうど2週間が経過したところだったという。



 架嶺は元首都タイムズのカメラマンだ。同紙のアマチュア担当記者の樹鞍諒一は1年後輩にあたる。よくコンビを組んで取材も行った仲でもある。




 「人生ってわからないものだな…」




 ドラフト会議で愛知ソニックに自分が絡んだ選手が指名された喜びをかみしめながら、架嶺は再び、あの頃のことを思い出していた。テーブルに置いてあった愛用のカメラをなでながら…。




 首都タイムズ時代の架嶺は「写真」にとりつかれたように動いた。レンズを通じて見たという感覚はない。撮っている間は時間を忘れていたような気がするという。



 入社して、ずっと一般スポーツ取材が中心だった。野球好きだったのに、不思議と野球には縁がなかった。それが、ある年、野球担当を言われた。架嶺の目は輝いた。それまで以上に気合が入った。



 やっているうちに、プロよりも、アマチュア取材に面白みを感じるようになった。「こいつは将来、大物になるぞ」なんて予想するのが楽しかった。実際、予想通りに何人もの選手たちが、その後、プロ入りして活躍している。いつしか、架嶺の「予想」は首都タイムズ内では「名物」になっていた。




 特に感心していたのが樹鞍だ。一緒にアマ野球取材にいけば「諒一! ○○と○○は、要チェックだぞ!」。グラウンドで高校球児の練習を30分くらい見たら、そんな風に声をかけてきた。架嶺が、その時、目をつけた選手はほとんどが無名の選手だ。取材ターゲットにはまったくなっていない選手をあえて、見つけてきた。いつも、そんな選手がいるわけではないが、絶えず、架嶺はそんな選手を探しながら、動いていた。もちろん、仕事もきっちり、こなしつつ…。それが楽しくてしかたなかった。そして、その目をつけた選手が後に、本当にすごい選手になっていくのだから、樹鞍も驚くばかりだったのだ。




 あの日も、架嶺は樹鞍とのコンビで、ある高校の取材に出かけていた。いつものように、選手たちの動きを見渡すと、ある選手が目に止まった。それから、いつものように、樹鞍のもとへ「報告」に向かった。



 樹鞍は関係者らしき人物と話し込んでいた。架嶺はためらったが、とりあえず、ちょっとだけ離れたところから声だけかけた。「諒一!」



 振り返った樹鞍は笑顔だった。関係者との会話をさえぎられても、嫌な顔ひとつせず、それどころか、笑顔でこう返してきた。「架嶺さん! 今日はいる?」



 架嶺は「○○君でよろしく!」。そう言って、その場を去った。



 「○○…」。樹鞍は資料を広げながら、その名前を探した。聞いたこともない名前だった。そのチームにはプロも狙う逸材がいて、注目されていたが、その名前は初耳だった。



 架嶺は完成された選手よりも、未完成の選手を好む。だから、大概「えっ」と思う選手ばかりだったが、その時の選手の名前は本当に聞いたことがなかった。



 「○○君はおととい、入部した選手ですよ。だから、資料に名前がないんじゃないの」


 「えっ、そうなんですか」


 「さっきの方はおたくのカメラマン?」


 「そうです。○○君は将来、楽しみって。まぁ、見る目はすごいんです。あの人は…」



 樹鞍と話していた男は架嶺に興味を持った。同じように○○君に注目していたからだった。



 「樹鞍さん、後で紹介してくれませんか。さっきの方を…」



 男はアンドロメダリーダーの大田原健太郎。それが架嶺とアンドロメダの最初の接点だった。




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