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zoom RSS 第305球

<<   作成日時 : 2009/08/10 01:15  

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 「あの出会いがなかったら、今頃…」。アンドロメダ調査員の架嶺雄大は、また、そんなふうに考えていた。過去を振り返るたびに、そう思ってしまう。そして、また、いつものように「人生ってわからないものだよな」とつぶやいてしまう。「もう、これって、俺のクセだな。笑っちゃうな」。口元がまたまた緩んだ。




 あれは札幌の某高校でのことだった。当時、首都タイムズのカメラマンだった架嶺は同僚ライターの樹鞍諒一とそこへ取材に出かけていた。


 札幌は架嶺の故郷。その学校のことも、昔から知っていた。その年のそこの野球部にはプロも注目する投手と野手がいた。まぁ、どちらかといえば、投手の方がドライチ候補と呼ばれていたが…。



 架嶺と樹鞍の取材ターゲットも、もちろん、その2人の選手だった。



 グラウンドに入るや、球児たちが帽子をとって、次から次へと挨拶してきた。どこの学校もそうだが、ここの野球部の生徒は特に深々とおじぎしているような気がした。




 白球を追う球児たちの姿は美しい。その純粋さが架嶺も樹鞍も好きだった。「プロよりも、やはりアマだよね」。2人はよく、このセリフを口にしたものだ。2人は監督に挨拶した。樹鞍はそのまま監督に取材をはじめた。そして架嶺はいつもの行動に…。




 レンズを通して、エースと主砲だけをチェックするのではない。まんべんなく、選手たちの動きを細かく追った。埋もれた逸材を探すのは、もはや架嶺のお家芸みたいなものであり、趣味でもある。その日も、鋭い視線で、全体をみつめていた。





 「うーん」




 パッと見た感じ、ビビッと来る選手はいなかった。珍しいことではない。むしろ、このパターンの方が多い。でも架嶺は簡単にあきらめない。もう一度、選手たちの動きなどを見直し始めた。





 その間に、樹鞍は監督取材をてきぱきとこなしていた。特にエースのことをみっちり聞いていた。慣れたものである。


 パターンとしては、その後、エース取材の許可をとる。監督が選手を呼び寄せたとき、すーっと架嶺もそこに現れる。あうんの呼吸ってやつだ。そして、その時に架嶺が「きょうは、あの子」なんて、言い出すと、樹鞍はさらに目を輝かせる。すかさず監督に追加取材をお願いする。




 「うーん」




 その日の架嶺はうなるだけだった。




 「今日はエース君、中心ってところか…」




 そういって、エースを目で追いかけた。どうやら、投球練習を行うらしい。架嶺にとっては願ってもない展開だ。




 「なんてたって、プロ注目のピッチングを生で見られるんだからな」




 自然と笑みがこぼれていた。




 捕手を立たせたままの「立ち投げ」からスタートして、ついに捕手が座った時には、身震いした。評判通りの球をビュンビュン投げ込み始めたからだ。






 「こりゃあ、すごいわ」



 撮影しながら、架嶺はうれしくてたまらなかった。そして、さらに…。






 監督取材を行う樹鞍のところへ架嶺は向かった。ちょうど樹鞍がエースの取材を始めようか、というタイミング。まさにドンピシャリだった。




 樹鞍たちの取材のために監督がエースを呼んでくれた。




 その時だ。




 「今日はあの子!」




 架嶺が樹鞍に耳打ちした。エースのことではない。




 「監督、あの選手にも、あとでちょっと話が聞きたいんですが、いいですか」




 すぐにOKが出たが、樹鞍のお願いは監督にとって想定外だったのだろう。ちょっと驚いた感じだった。


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