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zoom RSS 第44球

<<   作成日時 : 2005/12/19 17:03   >>

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 雪が降っていた。冷たい雪が降っていた。寒さが身に染みた。心も凍えた感じだった。つらかった。なぜ? どうして? 何もかもが信じられない気分だった…。でも、すぐに何事もなかったかのような日常が戻ってきた。悔しかった…。

 エイチエフ球団はその年の12月19日に紅獲得の断念を発表した。

「紅選手にはぜひ、ウチに来ていただきたかったのですが、社会人入りの決意が固く、残念です。でも彼とは3年後、また、ご縁があれば、指名させてくださいと伝えました」
 
 呈坂球団社長と室岡編成部長、伊刈監督の3人が並んで会見した。ドラフトから約1ヶ月。前日の18日にエイチエフはようやく、紅本人と対面できた。それは正式に断りを入れるという儀式。形を無理やり作ってもらっただけだった。そして、まるで自然の流れに乗っかるように、断念会見となったのだった。

 マスコミは概ね、紅に同情的だった。エイチエフのお粗末なスカウト活動ときつく報道したスポーツ紙もあった。

「悔しいなぁ…」

 各紙を読みながら、首都タイムスの樹鞍記者はつぶやいていた。大田原のことを書いた記者は1人もいなかった。知っていて書かなかったのか。それとも、本当に知らなかったのか。それはわからない。当の樹鞍も出稿するのを結局やめた。いろいろ書きたいし、言いたいことはあったが、証拠がなさすぎた。それに大田原が最後まで隠密行動をとっていたことを思い浮かべると、世間にさらしたくない、とも思った。それより、何か違った形で…。そんなことさえ考えていた。

 
 エイチエフの断念発表のわずか2日前の12月17日。熊本のホテルで大田原源太郎は72年の生涯を閉じていた。脳梗塞だった。エイチエフは紅問題にそこで踏ん切りをつけることにしたのだった。もちろん、今回の紅問題での大田原の存在は知られていない。かつて、甲子園に何校も導き、その後、エイチエフ球団のらつ腕スカウトとして知られた大田原元スカウトが病死、と新聞の片隅に寂しく報じられただけだった。


「亡くなる前の晩、監督は浴びるように酒を飲んでいたそうです。昔は酒好きでしたが、ここ数年はビール一杯だけにとどめていた人が、です。飲む直前にエイチエフの鬼車に電話を入れていたのは後でわかりました。あの時、監督はどんな気持ちで飲んでいたのだろうか。そう思うと胸が痛みますよ…。 だいたい、ドラフト制度っておかしいですよね。なんだかんだいっても、結局、カネがあるところに戦力が集まるようになっている。完全ウェーバー制にすれば、まだすっきりするのに…。契約金も高すぎるでしょ。規定の上限額なんて、あってないようなもんでしょ。おかしいんですよ。すべてにおいて…。必ず、カネが絡むスポーツなんて…。 きれいごとに聞こえるかもしれませんが、私は監督の死はそんなことを訴えていたような気がしてならないんです。 私事ですけど、兄が愛した野球、母が息子に夢見たプロ野球の世界って、こんなものだったのか とも思いました。泣きましたね。悔しくて、悔しくて…。 それからです。この球界で、何かできることはないか、何かやれないか ってね」

 村澤は明太郎に一気に話した。この時ばかりは紳士の笑みは消え、言葉がとにかく熱かった。

「エイチエフの鬼車も私に賛同してくれました。首都タイムスの樹鞍記者も役に立ちたい≠チて言ってくれました。他にも、監督に世話になった人を中心に、その輪は広がりつつあります」
「村澤さんは何かやることを決めているんですか」
「まぁ…。まだ構想段階ですけどね」
「何なんですか、それは…」
「それをいう前に、高杉さんには、紹介したい人がいるんです。会っていただきますか」
「構いませんけど…」
「じゃあ、ちょっと待っていてくださいね」

 5分後、村澤は30代後半か、もしくは40代か、と思われる、がっしりした体型の男性を連れてきた。

 男は深々と頭を下げ、こう挨拶した。

「はじめまして高杉さん。大田原健太郎といいます。よろしくお願いします」


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    2006年1月10日(火)
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    トプログ
    2005/12/21 18:03
    こんばんは
    ネットで探す!の葵(aoi)です。

    昨日は体力の限界で
    読めなくてごめんなさい。

    また、お邪魔します。

    応援 (*'-')σ ポチッ!×6
    ネットで探す!e-Book情報商材のレビ...
    2008/02/19 23:00
    葵さんへ。
    いつもコメント&応援、ありがとうございます。ちょっと出張中でバタバタしてお返事が遅れてすみません。お暇な時で構いません。また遊びに来てください。
    妃垣俊吾
    2008/02/22 11:49

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