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zoom RSS 第152球

<<   作成日時 : 2006/09/25 03:13   >>

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 手を合わせた。目を閉じて、こうつぶやいた。「久しぶりですね。おかげさまで、何とかやっています。今年は熱い夏になっていますよ。そして、楽しみな夏に…。どうか見守ってください…」。東京グレート総務課長の村澤三四郎だった。


 そこは村澤の義母が眠る兵庫県の某霊園だった。グレートのスケジュールも関係するものの、だいたい3ヶ月に1回はここに顔を出すようにしていた。村澤の父が再婚した女性のお墓だった。


 「あの人には何度も勇気づけられたものだよなぁ…」。村澤はここへ来るたびに思い出す。実母が名古屋の病院で入院していた時、親身になって看病してくれたのがこの2番目の母≠セった。聞けば義母は実母のことを最初、父の元妻とは知らなかったという。もっとも実母の方は会った時から父の新しい人≠ニ知っていたそうだが…。

 とにかく底抜けに明るい人だった。実際の年齢よりもずいぶん若く見えた。まぁ美人の看護婦だった。義母もバツイチで、子供が2人いた。村澤が出会った時にはその子供もすでに成人し、独立していたが、そんな大きな子供がいるようにはとても見えない魅力的な女性だった。

 名前は八重といった。旧姓は剛源。村澤が福岡にいる頃に、よくお世話になった病院の看護婦だった。やんちゃで、しょっちゅうケンカして、生傷の絶えなかった少年時代に…。考えてみれば八重には実兄・壱次朗も看病された。やっぱり何か縁があったのだろうか…。

 村澤が更正≠オて、野球に打ち込みはじめた時には、自分のことのように喜んでくれた。練習でヘトヘトになったら「三ちゃん、らしくないよ、そんな顔!」ってポンと肩をたたかれたのを今でも思い出す。よく応援にも来てくれた。声援を受ける方が恥ずかしくなるほど、大きな声で…。うまく行かない時、つまづいた時は、それこそ、村澤が納得するまで話に付き合ってくれた。「私に言って、気が済むなら、どんどん言いなよ」って笑いながら…。

 その頃からだった。名古屋の実母のところにも八重が頻繁に行くようになったのは…。何がきっかけだったのか、よくわからなかったが、村澤も「八重さんなら」と安心したものだ。何しろ、その時でさえ、村澤は八重が実父のいい人≠ニ知らなかったので…。知ったのは実母が亡くなってからだ。その時、村澤はプロ野球選手になっていた。そして、現役を引退した頃に実父と八重は再婚したのだった…。

 その後、いろんなことがあった(それはまたの機会になるが…)。八重は最後、わけあって兵庫・尼崎の孫夫婦の家で生活し、生涯を閉じた。前夫との間に生まれた娘の娘夫婦のもとで…。

 村澤が八重に最後に会ったのは亡くなる1年前だった。尼崎の喫茶店で2時間くらい…。いろんなことを話したなかで八重はしきりに「ウチの曾孫は面白いわよ」とニコニコしていた。「最初は相撲に興味があったのがいつのまにか野球に変わっちゃってさぁ…。もう契約金で何、欲しいとかいうのよ。でもセンスがあると思うのよねぇ…」と、とにかくうれしそうに…。もうおばあちゃんだったのに、シャンとしていた。とても健康そうだったのに…。



 「さて、いくかな」。村澤は目を開けて、立ち上がった。すると…。


 「村澤のおじいちゃん、ごぶさたしています」。少年が立っていた。


 「あのなぁ、そのおじいちゃんっていうのはやめてくれるか。せめて、おじさんにしてくれないかぁ」。村澤は苦笑した。

 「だって、大おばあちゃんの子供なんだから、僕からすればおじいちゃんなんでしょ。それに、もう歳なんだから、おじいちゃんでもおかしくないですよ」。少年はまくし立てた。何となくだが、しゃべり方が八重に似ているような、村澤はそんな気もした。


 「で、いいのか練習は。あさってだろ、試合は」。村澤はちょっと心配そうにも言った。でも少年は笑顔で「大丈夫です。調整にぬかりはありませんよ。でも今回は久しぶりにこっちに帰って来たんだし、大おばあちゃんのお墓参りはちゃんとね。初戦の前も来たんですよ。へへへ。だから今度もお願いしないと。見守ってください、見ていてください≠チてね」。


 「しかし、お前は会うたびにでかくなる感じだなぁ。名古屋の水にもなじんだみたいだな。まぁ、お前なら大丈夫とは思っていたけど…」と村澤は少年を見上げながら話した。可能性にあふれる少年の魅力をヒシヒシと感じながら…。


 「村澤のおじいちゃんもあさっては見てくれるんでしょ。応援、よろしくお願いします」。少年はペコリと頭を下げた。

 「竜照! だから、そのおじいちゃんっていうのは…」。村澤はまた苦笑いだ。


 少年の名は大和竜照。愛知代表・にしき水惣高校の強打、強肩の「4番・キャッチャー」だった…。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
最近、12話ほどで読むの止まっています・・・。
申し訳ない。
早く追いつかなきゃ。

でも140話後半からは読ませてもらってます。
羽少佐
2006/09/25 19:04
羽少佐さんへ。
いつもコメントありがとうございます。そんな謝らないでください。読んでいただけるだけでこちらはありがたいんですから…。でも読み続けていただけるように私としても頑張らないといけませんね。励みにします。
妃垣俊吾
URL
2006/09/26 02:40

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