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zoom RSS 第259球

<<   作成日時 : 2008/06/28 01:47   >>

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 どうしても気になった。同じ高校1年生。正直、自分の方が力は上だろう、って思ってはいた。向こうはすごい人気だけど、顔だって、とさえ思った。だからだろうか。いざ対決すると、意識した分、何となく…。「負けたくない」。そう思った。力んでいた。しかし、それが不思議と…。


 5回裏二死満塁。瑞泉(西東京)のエース・GSコンビの「G」剣源氏は気持ちが高ぶっていた。抑えられた、打たれた、のダブルショックを受けた相手・守野台(兵庫)飛浦海斗が打席にいる。「ここを切り抜けないと、もうひとつ先にいけないんだ」。そうも思った。


 飛浦の右手がバットに固定されていた。剣もそれには気がついた。指がおかしくなっている、ということまではわからなかったが、何らかのアクシデントに見舞われていることぐらいは想像できた。なにしろ、それでなくても、疲労困憊の様子で、ここまで投げていた相手だから…。しかし、だから、こっちが有利とは思わなかった。思えなかった。飛浦の底知れない力をここまでの戦いで、感じていたから…。「全力でいかないとやられる。中途半端はダメだ」。そう考えていた。



 打席の飛浦は、無の心境だったという。いや本当はそうではない。「無の心境でいこう。こういう時はその方がいいはず」と自分で決めていただけ。でも集中はしていた。本当に雑念はなかった。バットに包帯でくくりつけた右手がインパクトの瞬間にどうなるかは知ったことではない。包帯を巻くときは「漫画の世界だったら、打った時に包帯がきれいにほどけて、ちょうどいい感じになるんだろうな」って思ったが、この時はもうそんなことも考えていなかった。「とにかく打つ!」。それだけだった。




 剣はストレートを内角に投げ込んだ。気持ちが入っているはずなのに、球は相変わらず走っていない。棒球だ。飛浦はもちろん、それを打ちにいった。



 KOSMOS放送の塁沢高次アナが「剣、投げました。 飛浦、打ったぁ」とラジオのように実況した。



 インパクトの瞬間を飛浦はよく覚えていない。だが、打球はすごい勢いで三塁側スタンドに飛び込んでいった。



 ファウルとなった後、剣は自分の手のひらを見つめていた。「気持ちがボールに伝わっていないのだろうか」とふと思ったという。それから、なぜだろう。感じたという。スーッと、気持ちが冷めていくのを…。体全体で落ち着いていくような…。



 飛浦と戦いながら、剣は幸せな気分をも感じていた。


 再び、マンモスを厚い雲がおおい、あっという間に雨が本格的に降り出した。でも剣は、そんなことも気にしていなかった。心地よかった。飛浦の真剣な顔、必死の表情に勇気付けられていた。



 ファウルを打った後、飛浦は右手を見た。まだくくりつけられたまま。実はちょっとしびれていた。



 「今の球はきっちり打ち返したかったな」と思った。実際、打ち損じだった。もともと打撃は得意ではない。それでも思った。「もったいなかったな」と…。



 その通り、もったいなかったようだ。なぜなら、剣の球は、そこから、よみがってしまったから。



 2球目も内角に来た。バットは出なかった。手が出せなかった。厳しいコースにズバッと来た。球審がストライクをコールした。



 瑞泉の捕手・経谷も「オッ」と思った。「いい球だ」と思った。もしかしたら、ノーヒットピッチングだった序盤よりもいい球かもしれないと思ったという。



 3球目は外角のボール球。だが、経谷はその球を受けても同じことを思った。



 「こいつに負けるわけにはいかないんだ」と思いながらも、妙に冷静な自分自身を剣は感じていた。余分な力が抜けていたようだ。気持ちよく投げていた。




 「内角まっすぐ。2球目と同じところ」。4球目はそう決めて投げ込んだ。




 飛浦も今度は手を出さないわけにはいかない。ちょっと窮屈な感じでバットを出した。しびれていたはずの右手の感覚はまったくなかったという。「取られたら、取り返すんだ!」。もう一度、その気持ちだけで、バットを繰り出したという。




 剣対飛浦。


 「ゲンジコール」対「海斗コール」





 マンモスもこの対決にはしびれていたのかもしれない。




 「グシャッ」って感じで打球は上がった。つまっていた。剣が打球を目で追った。飛浦はバットをくくりつけたまま、一塁へ走るしかなかった…。

 

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こんばんは!shadowです。今日は、私の新しいブログの宣伝にやって来ました。このブログが今後主サイトになる予定になっています。良かったら遊びに来てください。
shadow
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2008/07/04 19:48

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