アンドロメダ

アクセスカウンタ

zoom RSS 第266球

<<   作成日時 : 2008/08/17 01:51   >>

トラックバック 0 / コメント 2

 ネット裏の動きが慌しくなった。プロのスカウト陣の目が光った。アンドロメダリーダーの大田原健太郎は携帯電話を取り出した。九州地区担当調査員の神威小次郎が「国際電話ですか」と標準語で聞いた。サブリーダーの鬼車寅吉はメガネのレンズをふき始めた。打席では瑞泉(西東京)GSコンビの「S」早瀬将吾が軽くスイングしていた。



 守野台(兵庫)の一塁手・矢木沼が小走りでベンチに戻ってきた。紀中監督が手をたたきながら、出迎えた。そして、代わりにグラウンドに飛び出す選手には、こう声をかけた。 「無理はするな! わかっているな! 少しでもおかしいと思ったら、すぐに言え! わかっているな!」



 「はい! 大丈夫です。わかっています!」。元気のいい返事が聞こえてきた。紀中監督は「思いっきりプレーしてこい!」と付け加えた。




 一塁に入ったのはロボット投法の椿直広だった。6回裏、先発の1年生・飛浦海斗をリリーフし、打者2人を抑えたところで、マウンドを降りた。もっとも、これは予定通りだった。登板前に紀中監督から「瑞泉の8番と9番をきっちり抑えるのが、まずはお前の仕事だ。早瀬にはアイツを使おうと思う。でも、いつでも再び、投げられるように準備はしておいてくれ。頼むぞ」と言われていた。椿も異論はなかった。むしろ、こう思った。「ランナーなしの展開で、早瀬との対決になるようにしないと…」




 7−6。守野台が1点リードで迎えた6回表。椿は見事に紀中監督の期待に応えた。会心のピッチングだった。気持ちよかった。でも、マンモスのマウンドに未練はなかった。それよりも、二死走者なしで、バトンを渡せることがうれしくてたまらなかった。だって、その椿も楽しみにしていたことだから…。




 紀中監督は飛浦を無理させたことを後悔し、責任を感じていただけに、この継投を最初は迷った。でも、決めた。椿同様に「見たい。見てみたい」の気持ちがなかったか、といえば嘘になる。だから決めたときには、ちょっとワクワクもした。「やってくれるはず」と思いながらも興奮していた。





 帽子をちょっとだけ深めにかぶり、マウンドに向かった。雨で中断があったとはいえ、いつでも登板できる状態にはなっていた。紀中監督が「椿は打者2人だけ」と最初から決めていたことは知らなかったが、何となく予想はできていたという。




 「ここが…」。マウンドに立って、しみじみと思った。この場を夢見て、汗を流してきた。1年生の時はすぐにいけるものだと思っていた。2年生の時は絶対いける、と思っていた。3年になって、何とかしていきたいと思った。その場所にやっと…。



 無意識に右手でマウンドの土を軽く触っていた。これまで、こんな動きをしたことはない。しかし、そうせずにはいられなかった。マウンドに感謝した。看護婦さんなど、お世話になった多くの人に感謝した。スタンドで応援している両親にももちろん…。投球練習をしながら、いろんなことも思い出された。




 前を見た。上を見た。下を見た。右も左も…。




 「なんともない!」



 守野台の3番手としてマウンドに上がった背番号「1」太薙原紘一はつぶやいた。





 「もしもし、欅さんですか。ついに彼が投げますよ。えっ、ネットで見ているんですか。そうですか…」。大田原健太郎は携帯で米国にいるアンドロメダの欅重次郎トレーナーに電話を入れていた。半年間だけだったとはいえ太薙原の元専属トレーナーだ。

 米国の欅は時差も関係なく、パソコンにかじりついていた。「お前なら、やれる!」。半年に渡って、何度も太薙原に励ました言葉を、また繰り返し、熱狂していたという。




 守野台アルプス席には太薙原の両親が若い女性と一緒に観戦していた。「紘一君の夢がかないましたね」と女性は言って、もはや目に涙を浮かべていた。




 さあ、いよいよ、太薙原がマンモスで投げる。1年の時からプロに注目されていた神戸の豪腕がはじめて、全国の舞台に登場だ。



 

 決勝戦、6回表二死走者なし。太薙原は早瀬に対して、マンモス第1球を投げ込んだ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お久し振りです。
携帯をソフトバンクに今月1日から変えました。
読んでいるうちに大変、気に入りました。

すいませんが相互リンクを受けつていたらどちらかのリンクを貼って頂けると有難いです。


暁の部屋
http://mydreamtime1.web.fc2.com/top2.html

ブログ
http://eagles19.blog39.fc2.com
SE・志望
2008/08/17 19:15
SE・志望さんへ。
コメントありがとうございます。気に入っていただけたのなら、うれしい限りです。リンク、貼らせていただきました。どうぞ、よろしくお願いします。
妃垣俊吾
URL
2008/08/18 04:11

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

メルマガ野球小説アンドロメダ

メルマガ登録・解除
野球小説アンドロメダ

読者登録規約
>> バックナンバー
powered by まぐまぐ!
 
第266球 アンドロメダ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる