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zoom RSS 第279球

<<   作成日時 : 2008/11/16 02:06   >>

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 KOSMOS放送の絶叫アナウンサー・塁沢高次のボルテージは上がりっ放しだった。1球ごとにシャウトした。スタンドもそう。1球ごとに双方の応援席から交互に声が上がっているような感じだった。マンモス決勝戦は、いよいよ大詰め。クライマックス。気合、気迫がグラウンド上に渦巻いた。



 7−6。守野台(兵庫)が瑞泉(西東京)を1点リードして迎えた9回表も二死となった。守野台のエース・太薙原紘一がちょっとだけ、息を整えながらも、目を光り輝かせていた。6回二死からリリーフして、ここまで打者9人をすべて三振にうちとった。プロ注目の神戸の豪腕は病み上がりながら、驚異の投球を続けていた。手がつけられないほど、ボールは走っていた。



 だが、瑞泉サイドは二死まで追い込まれても、まだ悲壮感はなかった。「アイツが何とかするはず」。ナインの誰もがそう思った。1番打者。1年生GSコンビ「S」早瀬将吾が打席に入っていた。この試合は3打席目まで、すべてホームランの離れ業。その打棒は間違いなく、大舞台で進化していた。4打席目こそ、太薙原の前に三振に倒れたが、同じ失敗は繰り返さないのが、早瀬だと、風喜監督も信じていた。



 スタンドもそうだ。守野台サイドでは太薙原の両親と1人の女性が祈るような面持ちでグラウンドを見つめていた。先発・飛浦海斗の応援団長の香村瞳は鉢巻を締めなおしてから、右ポケットの青いハンカチを握りしめた。「守野台! 守野台!守野台!」と連呼しながら…。



 瑞泉サイドでは早瀬の両親と妹が声を張り上げていた。もう座っていられなかった。周りもそうだ。全員が立ち上がって、打席の早瀬に声援を送っていた。こちらは、あとアウトひとつで負け。女子生徒のなかには、もう顔を涙でぐしょぐしょにしながら、声をからすものも…。応援に一体感があった。




 そして、西宮市の某病院では、先発の飛浦がテレビにかじりついていた。「先輩! お願いします!」。これまた祈っていた。甘いマスクの口元が引き締まった。傷ついた右肩、右腕…。まだ治療途中だったが、先生に無理をいって、ロビーに出た。大勢の人がテレビを見ていたが、気がつかれなかった。ついさっきまで、その激戦のグラウンドで投げていたというのに…。多くの女性ファンを釘付けにしていた、というのに…。そこにいた年齢層が高すぎたのかもしれないが…。





 塁沢アナが叫んだ。またまたラジオの実況のように叫んだ。



 「太薙原、第1球を投げましたぁ!」






 太薙原は147キロストレートを内角に投げ込んだ。




 早瀬は迷わず振った。




 「いったぁ!」。




 瑞泉応援席が騒いだ。瑞泉ナインも思わずベンチから飛び出した。





 打球は右へ飛んだ。飛距離は十分だ。




 しかし、さらに右へ切れた。ファウルだ。




 太薙原は打球を目で追わなかった。そういなくてもわかっていた。ファウルだということが…。打たれた瞬間にわかっていた。



 早瀬も同じだった。打った瞬間にファウルとわかっていた。体は万全ではない。一振りが精一杯の状態だけに、これは痛かった。ムダ打ち、ムダ振りは避けたかったのに…。



 でも、こうも思っていた。「やはり、こうなるか」と…。ちょっとだけ予想していた。最悪のケースとしてだったが、同時にそうなる確率も高いと思っていたという。


 もう一度、祈った。「頼む! 何とかこの打席はもってくれ」。いつ戦闘不能の状態になるか、わからなかった。祈るしかなかった。




 そんな早瀬の気迫を太薙原も感じたのだろうか。これまでよりも自分の息が荒くなっているかのような気がしていた。攻め方に関しては「計算通り」とうなずいてはいたが…。




 2球目。太薙原は外角低めにストレートを投げ込んだ。かなり厳しいコースだ。だが、早瀬はまたもや、迷うことなく振った。



 再び「いったぁ」の声が瑞泉スタンドからあがった。守野台サイドからは悲鳴のような声が…。




 これまた飛距離十分の打球が左へ飛んでいた。



 だが…。太薙原も早瀬も結果がわかっていた。



 「ファウル」。




 カウント2−0。早瀬は追い込まれた。体も限界を越えていた。それでも思った。「外角でも内角でもいい。動くボールよ、来い!」と…。6回に早瀬、7回にGSコンビ「G」剣源氏が三振を喫した球を待っていた。




 塁沢アナがまたまたラジオの実況のように叫んだ。




 「太薙原、早瀬への第3球、投げましたぁ!」

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コメント(2件)

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読者登録ありがとうございます゚+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚ これからも、よろしくでつ(*・∀-)☆
あけちゃん★
2008/11/17 12:54
あけちゃん★ さんへ。
コメントありがとうございます。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
妃垣俊吾
URL
2008/11/18 02:50

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