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zoom RSS 第286球

<<   作成日時 : 2008/12/29 01:55   >>

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 アンドロメダリーダーの大田原健太郎は調査員たちを大阪市内の某料理店に集めた。マンモス大会までを振り返り、ざっくばらんに話をしながら…。そのなかでサブリーダーの鬼車寅吉がこんな話をした。「これはリーダーには伝えていることですが、明日、マスコミ発表されることがあります」―。




 首都タイムズの樹鞍諒一はあまりすがすがしい気持ちではなかった。マンモス決勝戦翌日発行の記事があまり納得できるものではなかったらしい。「いっぱい書きたいことはあったのに…」。試合前には思ってもいなかった展開に結局、圧倒されたような気がしていた。








 守野台(兵庫)対瑞泉(西東京)の決勝戦。1点を追う瑞泉の9回の攻撃は二死一、二塁。ピッチャーは急遽、マウンドにあがった椿直広、バッターはGSコンビ「G」剣源氏だった。




 その初球だ。エース・太薙原紘一とGSコンビ「S」早瀬将吾の衝撃アクシデントで動揺するロボット投法・椿は不覚にもど真ん中に投げてしまった。もっとも、それさえもよく覚えていない状態での投球だったそうだが…。




 倒れてタンカで運ばれる早瀬を見送りながら「絶対勝つ!」と誓った剣は、その球を見逃さなかった。タイミングのとりにくいロボット投法だったが、この時は完全ばっちりのタイミングだった。





 「打ったぁぁぁ」。KOSMOS放送の塁沢高次アナもかすれ声で絶叫していた。




 打球はライトスタンドめがけて一直線だ。守野台・紀中監督も肩を落とした。瑞泉ベンチ前には何人かのナインが飛び出し、打球を目で追った。風喜監督も拳をぎゅっと握り締め…。瑞泉応援団もどっと沸いた。




 土壇場の逆転3ラン。剣もそれを確信したという。走りながら、まさに「ヨッシャー」の気持ちだった。





 ところが…。




 フェンスに張り付いたライト・七井がジャンプ一番、その打球をキャッチした。今度は守野台サイドがどっと沸く。七井はグラブを高々と掲げて優勝のガッツポーズだ。



 剣は一塁ベースを回ったところで、崩れるように座り込んだ。「そんな…」。瑞泉ベンチ前のナインは天を仰いだ。





 完璧な当たりだった。間違いなくホームランという感じの当たりだった。それが…。





 引き戻されていた。スタンドへ一直線の打球がマンモス特有の強い浜風によって…。しかも、あの時に限って、さらに強烈な浜風が吹いていたという。




 試合後、七井がこう話している。


 「僕もやられたと思いました。フェンスにたどりついた時でも正直あきらめていました。でも、ちょっと高く上がりすぎていたんじゃないですかねぇ。その分、僕も間に合ったような気がします。しかし、あそこから、ねぇ。いや、すごかったですよ。あの時の風は…。本当に僕らにとっては奇跡みたいな風でした。すごい勢いでボールが戻ってきたような感じでしたから…。ジャンプ? もう夢中でしたね。いちかばちかでした」





 七井がキャッチした瞬間、捕手の石陪歩はマウンドの椿のもとに駆け寄った。この試合、頑張った飛浦海斗も太薙原もいなかったが、優勝はやはりうれしい。夢にまで見た全国制覇を成し遂げたのだから…。



 しかし、椿はニコリともしなかった。勝ったのに、まだ動揺というか、放心状態だった。まさに剣を抑えたことが奇跡だった。






 「守野台が全国の頂点に立ちましたぁ!」。かすれ声の塁沢アナはそう絶叫した。早瀬と太薙原の容態が気になるなか、表彰式も終わった。守野台の初優勝で大会は幕を閉じた。







 そんな試合を樹鞍は振り返りながら、改めて、自分が書いた原稿を読み返していた。「やっぱり、いまいちだなぁ」。普通の人は何とも思わないかもしれない。だが、樹鞍は納得できずにいた。まぁ、満足度100%の記事なんてあるわけないのだが…。






 そんな日の午後のことだ。携帯電話が鳴った。東京本社のデスクからだった。





 「何ですって…」。樹鞍はつい、大きな声を出してしまった。

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