アンドロメダ

アクセスカウンタ

zoom RSS 第288球

<<   作成日時 : 2009/01/19 02:14   >>

トラックバック 0 / コメント 0

 マンモス大会後、米国遠征メンバーが発表された。瑞泉(西東京)のGSコンビ「G」剣源氏らが選ばれた。大会では特にスーパー1年生の活躍が目立ったが、代表に名前を連ねたのは、その剣だけだった。他の有力候補は故障などを理由に辞退していた。さらに1年生だけではない。2年生のあの面々も…。



 午後4時ちょうどに始まった記者会見。学校長がこう切り出した。



 「私ども、私立にしき水惣学園高等学校では、このたび野球部を解散することになりました。部員の今後に関しましては本人たちの希望を優先し、最後までバックアップすることになっております。突然の決定となりましたが、もちろん、思うところあってのことでございます。我が野球部は全員1年生メンバーだったにもかかわらず、全国大会出場を果たしました。しかし、これが本来の在り方として、よかったのかとの意見もあり、協議を重ねた結果、今回の決定となりました。ご理解いただけるか、わかりませんが、監督、部長、そして生徒たちは全員、納得しております」





 マンモス大会でベスト8入りして大旋風を巻き起こした愛知代表・にしき水惣。スーパー1年生軍団として話題になった。エース・結城亮は驚異の162キロを記録し、東東京・真極学園戦ではノーヒットノーランも達成した。強打強肩の大和竜照捕手、センス抜群の明智吾郎内野手、ミラクル守備の飛騨隆久外野手など、メンバーのレベルは全員高かった。水惣関係者が全国からスカウトしてきた選手たちだった。



 そんな野球部の解散宣言だから、衝撃は大きかった。学校長の説明後の質疑応答は1時間に及んだ。会見に同席した雄田監督も汗を流しながら、一生懸命答えていた。



 最大の理由はスカウト活動の見直しだった。露骨な野球留学という形への反対意見が出たからだという。新設校の水惣は、これからは地域密着精神でいきたいという。理想通りはなかなかうまくいかない。そうわかっていながら挑戦したい、とのことだった。もともと強化に力を入れていたのは野球部だけ。他の運動部にはスポーツ留学の形態はとっていなかった。



 だからといって生徒たちのことを考えれば、解散というのはどうなのだろう。記者団からは当然、そう疑問視する声があがった。水惣側は「生徒たちのためにも早い方がいいと思いました」といったニュアンスの答弁に終始したが…。



 首都タイムズのアマチュア担当記者の樹鞍諒一はメモを取りながら、いろいろ考えていた。大会前に取材した時のことも思い出した。水惣の陰のコーチ・ミスターKと呼ばれる人物にも接触していた。いつもサングラスにマスク姿だったが、その言葉には重みを感じたものだ。


 だが、樹鞍は知らなかった。ミスターKの指導には秘密があったことを…。そして、それが今回の解散にも関係していたことを…。



 会見終了後、樹鞍は雄田監督をこっそり追った。他社の記者がいないことを確認してから直撃した。「大田原連太郎さんのことなんですが…」




 雄田監督は無言だった。一瞬、表情を変えただけだった。監督も連太郎にスカウトされた1人だった。結城が多摩田亮時代に所属していたシニアチームの監督を務めていたとき、連太郎に水惣入りを打診された。そのシニアチームの特別コーチ・ミスターKを引き抜くとともに…。



 「雄田さんが、ご存知じゃないってことはないですよね」




 樹鞍の質問に雄田監督が答えることはなかった。






 大田原連太郎はアンドロメダリーダーの大田原健太郎の実兄だ。事情あって、兄弟は絶縁状態にあったが、ともに野球を見る目は確かだった。亡き父・大田原源太郎譲りの…





 樹鞍は思い切って、かなり思い切って電話した。相手は大企業「YUKI」の結城会長だった。水惣のスーパーエース・結城亮の実父でもある。以前から面識はあったが、正直、電話取材は初めてだった。携帯電話が普及してから、取材も電話が増えたが、樹鞍の基本は対面取材。まして、それなりの立場の方に電話では失礼との気持ちが強かったからだ。だが、この時はどうしようもなかった。



 どうしても連太郎のことがすぐに知りたかった。野球留学を解散の理由にするのなら、スカウトマンの連太郎の立場がどうなったのか、気になっていた。結城会長は水惣のバックではないが、息子を入学させるにあたって、いろいろ動いたとの情報があった。「きっと何かを知っているはず」。樹鞍はそう思っていた。



 その通り、わかった。連太郎のことが…。やはり、今回の水惣野球部解散に大きく関係していた。



  • 次球(第289球)へ

  • テーマ

    関連テーマ 一覧


    月別リンク

    トラックバック(0件)

    タイトル (本文) ブログ名/日時

    トラックバック用URL help


    自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

    タイトル
    本 文

    コメント(0件)

    内 容 ニックネーム/日時

    コメントする help

    ニックネーム
    URL(任意)
    本 文

    メルマガ野球小説アンドロメダ

    メルマガ登録・解除
    野球小説アンドロメダ

    読者登録規約
    >> バックナンバー
    powered by まぐまぐ!
     
    第288球 アンドロメダ/BIGLOBEウェブリブログ
    文字サイズ:       閉じる