アンドロメダ

アクセスカウンタ

zoom RSS 第294球

<<   作成日時 : 2009/03/02 03:17   >>

トラックバック 0 / コメント 0

 報道陣がざわついた。「それは引退ということですか」。代表質問者も戸惑っていた。「引退とまでいえる身分ではないと思いますが、まぁ、そういうことにもなるのでしょうか。まぁ、活動休止みたいなものと受け取っていただければ…」。精一杯の標準語で答えた。プロサイドにも衝撃を与えた。



 長崎・桜福坂高校で行われた速水拳の緊急記者会見だった。こんなことをするつもりはなかったが、首都タイムズに「希望はグレート、それ以外なら進学」と報道されて、大騒ぎになったため、沈静化するには、このタイミングで発表するしかなかった。



 走攻守三拍子揃っているだけでなく、有名モデルとしても超人気もの。速水はこの年のドラフトの目玉だった。それが…。



 「高校卒業後にプロ野球にお世話になることは考えていません。いろいろ考えた末に、野球はここで区切りをつけたいと思います。中途半端にプレーせず、これからは仕事の方に専念したいと思います」




 速水は淡々とそう説明した。



 報道陣からは当然「いつ決断したのか」「これまでプロ野球に進もうと考えたことはなかったのか」などの質問が飛んだ。



 「ずっと東京グレートさんが好きだったのは事実です。もしプロ野球の世界に進むなら、グレートさんしか考えられなかった。それ以外なら大学進学を考えたこともありました。でも、最終的には自分自身で仕事を、と決めました」



 そう速水は答えた。



 実際は夏の長崎予選決勝に敗れた時点にモデル業に進むことを決めていた。しかし、会見では、そういう説明はしなかった。



 前日、アンドロメダ九州地区調査員の神威小次郎と話し合った結果、そう話すことにしていた。今回の首都タイムズの報道は東京の所属事務所関係者が「速水は東京にくることになると思います。そうでなければ、地元の大学に進学すると思う」と話したのがきっかけだった。そこから話がどんどん大きくなって、さらに…。




 神威は首都タイムズのアマチュア担当記者の樹鞍諒一にその背景を聞いた。樹鞍は言いにくいことも教えてくれた。報道の裏の裏を…。



 すべてを聞いて速水が全否定した場合、話はさらにやややこしくなる、と神威は思った。それは樹鞍も同感だった。速水の記事は樹鞍のものではなかったが、アンドロメダ人脈を持つ以上、動くしかなかった。


 速水もそれを理解した。グレートファンだったのは事実だし、そんな大好きなグレートを混乱させたくなかった。そこで問題の部分はすべてオブラートに包んだように話したのだった。




 翌日のスポーツ紙は首都タイムズを含めて「速水引退。ドラフト超目玉消滅」といった大見出しで報道した。なかにはわざわざ「東京グレートか進学から一転の理由」との説明記事もあったが、県予選の頃の決意を報じたものはひとつもなかった。しかし、速水も神威もこれでいいと思った。



 樹鞍はアンドロメダリーダーの大田原健太郎にも電話を入れた。「いい記事をお願いします」と言われ、電話口の前で頭を下げた。




 プロ野球サイドは大動揺だった。速水1位を決めていた球団はてんやわんやだった。ハズレ1位を繰り上げるのか、それとも…。各球団とも戦略を練り直した。


 


 そんなある日…。


 東京都内の某球場スタンドに愛知ソニックの火牙竜太スカウトがひとり陣取っていた。元投手でスカウト1年生だ。ちなみに真極学園を中退した古城直人が「赤いおじさん」と慕う元京都ジャックの火牙と同姓(古城が「赤いおじさん」と「ソニックの火牙」を同じ人物と勘違いしていた時期もあった)



 その火牙はこうつぶやいていた。「ドライチもどうなるかなぁ。速水がああなっちゃったし…。普通なら守野台のエース・太薙原紘一に人気も集まるところなんだろうけどなぁ…」



 グラウンドでは大学リーグ4部の試合が行われていた。ソニックが育成枠で狙う選手が出場するため、火牙はチェックにきていたのだが…。


  • 前球(第293球)へ

  • 次球(第295球)へ

  • テーマ

    関連テーマ 一覧


    月別リンク

    トラックバック(0件)

    タイトル (本文) ブログ名/日時

    トラックバック用URL help


    自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

    タイトル
    本 文

    コメント(0件)

    内 容 ニックネーム/日時

    コメントする help

    ニックネーム
    URL(任意)
    本 文

    メルマガ野球小説アンドロメダ

    メルマガ登録・解除
    野球小説アンドロメダ

    読者登録規約
    >> バックナンバー
    powered by まぐまぐ!
     
    第294球 アンドロメダ/BIGLOBEウェブリブログ
    文字サイズ:       閉じる