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zoom RSS 第295球

<<   作成日時 : 2009/03/09 00:43   >>

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 「あれっ、神威はどうした?」。アンドロメダサブリーダーの鬼車寅吉が問いかけた。「ちょっと野暮用ができたそうです。あとで追いかけるからって言っていました」「さっきの女性だろう。あいつ、何か顔色が変わっていたから」「それはちょっとわかりませんが…」。そんな会話を聞きながら、リーダーの大田原健太郎は微笑んだ。




 東京都内の某球場、大学リーグ4部の試合を見ながら、愛知ソニックの火牙竜太スカウトはこんなことを考えていた。


 「今年はドライチ候補が大混戦だな。うちも桜福坂の速水を指名する予定だったけど、まさかのプロ拒否だもんなぁ。どうするんだろ。普通なら守野台のエース・太薙原紘一が最有力だろうけど、体調が不透明だし、あのマンモス決勝戦で瑞泉の早瀬将吾の頭にぶつけたショックも重なって、練習できないままらしいし…。今のところ、本人もプロ志望届を出していないし、もう無理なんだろうな。しかし、あれさえなければ、即戦力の高校生投手なんだけどなぁ。もったいないよなぁ。しかし、早瀬のことを考えると、そんな気持ちになれるわけもないか…」




 火牙はスカウト1年生。がむしゃらに活動してきたつもりだ。そんな火牙も総合的に判断して速水と太薙原の2人が抜けた存在と思った。それだけに2人のリタイアは球界にとっても痛い。まさに、本命不在のドラフトになっていた。


 その日、火牙がそこにいたのはソニックが狙う選手がいたからだった。4部リーグ・海柳清大4年の雷藤海路投手。左の本格派。ストレートはMAX138キロながら、制球力はそこそこで伸び白を感じさせる選手だ。ソニックは育成枠での指名を検討している。その最終チェックだ。海柳清大の相手は4部最下位の北斗星大。プロのスカウトは火牙しかいなかった。




 ところが、あたりを見渡すと…。



 「あれっ」。



 火牙はどうしたんだろうと思った。まさか、雷藤は彼らと関係あるのか、と思った。プロサイドでも噂になっているマネジメント会社・アンドロメダのリーダー・健太郎をはじめ数名がスタンドの上の方にいたからだ。





 「じゃあ、さっきの件は神威さんが合流してから、ということにしよう」と健太郎は言った。「そうしよう」と鬼車もうなずいた。「この試合にも、いるかもしれませんしね」と…。



 アンドロメダの面々は午前中に隣の球場の試合をチェックしていた。準硬式野球を数名で見ていた。興味のある選手がいた。センス抜群のスラッガーが…。もし本人さえよければ、アンドロメダに迎え入れたいとさえ、思える人材だったという。



 その選手についてのメンバーの意見をまとめるために、面々は4部リーグの試合が行われている球場スタンドに移動した。時間は無駄にしない。そこにも、未知の魅力あふれる選手がいるかもしれない。メンバーは可能な限り、球場に足を運ぶことを基本にしていたからだ。




 そこに1人だけ遅れたのが神威だった。初めて、その選手を見たのだが、同じスタンドで思わぬ人も見つけてしまった。会ってしまった。それで…。



 「もし何だったら、先にやっていてください、とも言っていましたけど…」。そう話したのはアンドロメダ北海道地区担当調査員の架嶺雄大だ。彼もまた、準硬式のスラッガーチェックのために上京していた。情報連絡の目的もあったが、メインはそちらだった。



 そんなアンドロメダの「事情」を火牙は知らない。「どうしたんだろう」と思いながら、グラウンドをみつめた。バックネット裏からじっくりみつめた。



 雷藤は先発で登場し、予想通りのピッチングを繰り広げた。5回まで許したヒットは2本。安定感があった。



 「まぁ、格下相手だからなぁ」と火牙は思った。北斗星打線はそれくらい見劣りした。



 そんななか、学生たちがドタバタと動きだした。「先輩のビデオをとっておけって。頼むよ。もしかしたら、貴重な映像になるかもしれないから。将来、代議士になる人なんだからな」。そんな声が火牙の耳にも聞こえてきた。



 6回表、海流清大の攻撃だった。北斗星大学の投手が代わった。



 「ん、誰だ、この選手」と火牙がメンバー表を見直したのも無理はない。この試合が最初で最後の登板。北斗星大4年・日向太良のデビュー戦だった。


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